政府のIT総合戦略本部は2016年9月16日、企業が保有する購買履歴などの顧客データを、顧客の意思で他社も活用できるよう検討する有識者会議を立ち上げた。

 発足した有識者会議は「データ流通環境整備検討会」。個人が自らのデータを管理できる「パーソナルデータストア(PDS)」や、データ管理を代行する「情報銀行」などの構想を基に、2016年度中にガイドラインを作成する(図)。FinTechやヘルスケア、観光・交通などの分野を対象に、顧客属性や購買、移動履歴などのデータについて、顧客の同意を得れば、企業や業界の垣根を越えてデータ流通が実現できるように検討を進める。

図●情報利用信用銀行制度構想
図●情報利用信用銀行制度構想
個人データを預けて活用?(出所:経済産業省産業構造審議会商務流通情報分科会情報経済小委員会分散戦略ワーキンググループ(第3回事務局資料)より作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 検討会では、主に二つの課題が示された。まずプライバシーの保護。顧客が自らのデータの「オプトアウト(利用停止)」を選べる仕組みや、データの提供経緯を追跡できる「トレーサビリティ」の確保を検討する。

 続いて、企業による顧客の囲い込みの解消だ。検討会では、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)やデータの互換性を検討する。データの流通を促す価格形成のあり方も議論し、新産業の創出や競争力強化につなげたい考えだ。

モデルは英国のプロジェクト

 先行例は英国にある。2011年から政府主導で、企業が集めた取引履歴データを消費者が自由に利用できる「midata(マイデータ)」というプロジェクトを始めた。例えば、2015年3月に民間企業が始めたサービスは、消費者が銀行やクレジットカード、携帯電話会社などの取引履歴データを分析して、その消費者に合った他社のサービスを紹介してくれる。