DeNAの人事部門が、複数の人事関連システムのデータを統合的に扱う「人材管理システム」の内製開発を進めている。開発に使っているのは、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールの「QlikView」だ。QlikViewのETL(抽出・加工・転送)機能を使い、異種システムからデータを容易に抽出して可視化したり、システム間でデータを加工・蓄積したりできるようにした。データ操作に特化したETL機能を使うことで、システム開発経験のない人事担当者でも開発できた。

 ヒューマンリソース本部人材企画部ビジネスパートナーグループの貝瀬岳志シニアマネージャーは「人事部門に配属になった時、データを効率的に使いたいと思って方法を探していた」と話す。システム開発経験がある貝瀬氏はレポート出力に使っていたBIツールに目をつけ、自分たちでシステムを構築することを考えた。

ヒューマンリソース本部人材企画部ビジネスパートナーグループの貝瀬岳志シニアマネージャー(左)と同グループの酒井瞳氏(右)
ヒューマンリソース本部人材企画部ビジネスパートナーグループの貝瀬岳志シニアマネージャー(左)と同グループの酒井瞳氏(右)
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 DeNAは事業拡大に合わせて複数の業務システムを導入してきていて、人事部門が使うデータも約10個のシステムに分散していた。QlikViewのETL機能を使い、人材管理のためのデータベースを作成した。分析機能を利用して、人材を技術や経歴といった要素で検索したり、1日単位で残業時間を概算して過剰労働の警告を発したりする仕組みを作った。

人事システムは開発しにくい

 DeNAの人事部門がシステムを内製開発するのは、人事情報というセンシティブなデータを扱う業務の特性上、情報システム部門でもシステム開発を委託しにくいと考えているからだ。ダミーのデータを使うとしても、ダミーデータを用意することそのものの負荷が大きく、作業工数が膨らみやすい。

 ヒューマンリソース本部人材企画部ビジネスパートナーグループの酒井瞳氏は「人事用のシステム開発をしようと要件定義を実施しても、人事部門でシステムに詳しい人がいなくて要件がうまくまとまらなかった」と話す。システム開発が難しいため、事業の変更に合わせて人事システムを開発し直すのも困難で、簡単な作業も手作業で処理することが多かった。

 BIツールを使ったシステム内製開発をするまでにも、業務システムのデータを収集し人事業務に活用しようとする取り組みがあった。Microsoft Officeの「Access」を使って、人事担当者がデータベースを作っていた。酒井氏は「データベースに複数人で同時アクセスすると動作が不安定になったり、データ操作が複雑になったりして十分に使えていなかった」と振り返る。BIツールは導入していたが、定期的な従業員数のレポートを出力するために使うのみだった。