NTTドコモが2017年4月に打ち出した中期経営戦略「beyond宣言」。多くの内容は既存の取り組みの延長線上で目新しさを欠く中、ひときわ目立ったのが、FinTechサービスへの意気込みだ。これまで取り組んできた決済や送金、保険だけでなく、投資やレンディング(融資)のサービスも手掛けていくとした。

NTTドコモは2017年4月発表の中期経営戦略でFinTechサービスの本格展開を表明
NTTドコモは2017年4月発表の中期経営戦略でFinTechサービスの本格展開を表明
出所:NTTドコモ
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 中期経営戦略の説明会では大まかな方針の言及にとどまったが、内部では様々な検討が進んでいる。QRコードによる決済、ウエアラブル端末と連動した健康増進型保険、dポイント活用の投資体験、自己啓発活動に対する少額融資などである。できれば2017年度内にも実現したい考えだ。

 7月1日には社内にFinTech推進室を設置した。従来も金融ビジネス推進部で内々に検討を進めてきたが、20人超の専門部署を立ち上げて事業化を急いでいる。FinTech推進室の江藤俊弘室長に現状の取り組みを聞いた。

NTTドコモ スマートライフビジネス本部金融ビジネス推進部FinTech推進室の江藤俊弘室長
NTTドコモ スマートライフビジネス本部金融ビジネス推進部FinTech推進室の江藤俊弘室長
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QRコード決済を「年度内には始めたい」

 一口に「FinTech」と言っても分野は広く、様々なサービスが考えられる。NTTドコモが主に検討しているのは、冒頭で触れた通り、(1)決済・送金、(2)保険、(3)投資、(4)レンディングである。

 これらのうち、早期の実現を期待できるのは(1)と(2)。(1)は「iD」や「dカード」、(2)は「ワンタイム保険/サイクル保険」などで、これまでの実績があるからだ。

 (1)の決済・送金でNTTドコモが着目しているのは「QRコード決済」。「バーコード決済は中国をはじめ、インドや韓国でも導入が進み、アジアのスタンダードになるかもしれないというレベルまで成長してきている。訪日外国人向けに限らず、日本でも広がる可能性は十分にある」(江藤室長)。

 NTTドコモと言えば、FeliCa方式の決済を推進、普及させてきたことで知られる。課題はリーダー/ライターが高価なことだ。店舗は最低5万~10万円程度の導入費用がかかる。一方、バーコード決済はスマートフォンやタブレット端末に読み取り機を付けるだけ。実現方法次第で決済手数料も安くできる。

 QRコード自体は店舗の割引クーポンやLINEの友達追加などで使われており、ユーザーもなじみやすい。「もちろん、今後もFeliCa方式の取り組みを継続するが、補完という意味でバーコード決済のポテンシャルは見逃せない。まだ何も決まっていないが、2017年度内には始めたい」(江藤室長)とする。

 (2)の保険はウエアラブル端末で健康状態を取得したり、通信モジュールで運転状況を計測したりすることで、優良な顧客の保険料を割り引くような取り組みを考えている。前者については、東京海上日動あんしん生命保険と組み、健康増進活動に応じて保険料の一部をキャッシュバックする「あるく保険」を提供済みだ。

 保険会社は顧客との接点が主に契約時と保険料の支払い時に限られ、最近ではアフターフォローに力を入れる動きがある。その点、携帯電話事業者はスマートデバイスを通じて日常的な接点があり、支援できることは多い。NTTドコモは「+d」のスローガンを掲げて様々なパートナー企業との協業による価値創造を目指しており、保険の領域でも提携先を広げていきたい考えだ。