各省庁の2018年度概算要求が出そろった。IT関連では人工知能(AI)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)、次世代モバイル通信「5G」など、新たな産業基盤を担う技術への要求が目立つ。マイナンバー普及のテコ入れ策として、活用範囲を広げる技術開発の予算要求もあった。

国の2018年度予算の概算要求の主なIT関連項目
国の2018年度予算の概算要求の主なIT関連項目
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AI特化の次世代半導体チップ開発

 経済産業省は「AIチップ・次世代コンピューティングの技術開発事業」と題して、従来のIoT向け技術開発事業を改編したAI関連予算を要求した。2018年度の要求額は100億円だ。半導体チップの集積度が1年半~2年で倍増するムーアの法則が成立しない「ポストムーア」の時代に向けた、AI用途に特化した半導体チップを開発することを目指す。

 具体的には分散処理技術のエッジコンピューティング向けAIチップの開発を推進するほか、省エネ性能を高めやすい非ノイマン型の半導体チップや、組み合わせ最適化問題を高速に解ける量子コンピュータの研究開発も進める考え。100億円の予算は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じて大学や企業に配分する。

 半導体チップの開発には設計/検証ツールやチップ試作サービスの利用などに「億単位の初期投資がかかる」(経産省 情報産業課)ため、スタートアップ企業にはハードルが高い。同省はスタートアップ企業向けにチップ開発の環境を整備する事業を始める計画も立て、予算として26億円を要求した。

 AIチップは海外では米グーグルや米インテル、国内でもPEZY ComputingやPreferred Networks、富士通などが開発を進めている。国からの資金面での支援拡充により、国内のAIチップの開発熱がさらに高まりそうだ。

 一方、総務省は2020年に商用化される5Gの要素技術の研究開発や業務利用を開拓するための実証実験に66億3000万円と、2017年度から15億2000万円増を要求した。2017年度から始まる、5Gを使ったトラックの隊列走行制御や遠隔医療などの実験を2018年度も継続する。5Gを地方活性化に活用する実験も新たに始める。