2014年9月1日、ミャンマーの携帯ショップにSIMカードを購入する人々の行列ができた。ミャンマー郵電公社(MPT)が4万枚のSIMカードを発売したのだ。価格は1500チャット(約160円)。同国はSIMカードの流通量が少なく、入手するのに数万円かかることも珍しくなかったことを考えると破格の値段である。「一般ユーザーにも手が届く価格だ」と、「グローバルWiFi」を提供するビジョンの社長室室長を務め、ミャンマーの通信事情に詳しい五味陽介氏は話す。

 KDDIと住友商事は2014年7月16日、このMPTと共同事業という形でミャンマー市場に参入することを発表した(写真1)。今後10年間で、約2000億円を通信設備の増強などに投じる予定だ。KDDIと住友商事との合弁で設立したKDDI Summit Global Myanmar(KSGM)には、日本から約50人を出向させる。

写真1●KDDI Summit Global Myanmar(KSGM)とミャンマー郵電公社(MPT)との調印式。左はKSGMの長島孝志CEO、右はMPTのキン・マウン・トゥンゼネラルマネージャー
写真1●KDDI Summit Global Myanmar(KSGM)とミャンマー郵電公社(MPT)との調印式。左はKSGMの長島孝志CEO、右はMPTのキン・マウン・トゥンゼネラルマネージャー
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手付かずの3000万人市場

 KDDIがミャンマーに目を付けたのは、これから急速な成長が見込まれるからだ。ミャンマー政府は現在、2016年までに携帯電話普及率を80%まで引き上げる目標を掲げている。だが現状は携帯加入者数が700万人弱、普及率は10%強に過ぎない。

 今まで、MPTが独占的に通信事業を手掛けてきており、積極的なビジネス展開をしてこなかったのが一因だ。2016年には5000万人強の人口のうち、3000万人以上の市場が手付かずで残っている計算だ。

 MPTの1契約当たりの月間平均収入(ARPU)は明らかではない。ただし、KDDIによると周辺の南アジア地域は3~4ドル、タイは7~8ドルだといい、それを上回る水準だという。仮に同水準とすれば、2016年に年間1500億~4000億円以上の市場規模が見込まれる。