みずほ証券が、東京証券取引所の旧・株式売買システムのバグによる損失など約415億円の賠償を求めていた裁判で、最高裁判所は2015年9月3日、双方の上告を退ける決定を下した。これにより、東証に約107億円の支払いを命じた東京高等裁判所の判決が確定した。

 事の発端は2005年12月、みずほ証券が、ジェイコム(現ジェイコムホールディングス)株の誤発注で400億円を超える損失を出したこと()。みずほ証券は、発注を取り消せないバグが売買システムにあったのが、損失が拡大した原因として、東証に約415億円の損害賠償を求めた。

表●株誤発注事件とみずほ証-東証裁判の経緯
表●株誤発注事件とみずほ証-東証裁判の経緯
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 事件の発生から10年が経つ。最高裁までもつれ込んだIT訴訟から、得られる教訓は何か。改めて検証する。

 今回の一連の判決がIT業界に与えた大きな衝撃は、まず「ソフトウエアのバグに起因する損害を誰が、どこまで補償するのか」という難しい問題に、司法が一定の判断を下したことだ。

 今回の係争で東京高裁は、情報サービスの利用者に損害を与えたバグについて「バグの作り込みの回避、発見・修正が容易だった」場合、サービス提供者の重過失と認定できる、という判断基準を初めて示した。

 一般的過失ではなく「重過失」と認定されれば、たとえ契約に「サービスの利用に伴う損害は補償しない」といった免責条項があっても、サービス提供者は何らかの賠償責任を負わざるを得なくなる。

 東京高裁は、バグの発見が容易だったかどうかを検証するため、プログラムのソースコードを東証に開示させ、裁判の過程で原告・被告双方に検証させた。ソースコードが法廷で議論になった例は「少なくとも国内では初めてではないか」(複数の弁護士)。