スマートフォン向けのフリーマーケット(フリマ)アプリに再編の波が押し寄せている。楽天は2016年9月5日、「FRIL(フリル)」を運営するFablicを買収し、完全子会社にしたと正式発表した。楽天は「CtoC」と呼ぶ消費者間取引に注力する方針を表明済み。自前のフリマアプリ「ラクマ」とフリルとの相互送客やポイント連携によって、同事業を伸ばす考えだ。一方のFablicは、「決済」を軸にフリマアプリと幅広いサービスを連携させる構想を推進。両社の連合で最大手「メルカリ」に挑む。

 楽天はFablicの全発行済み株式を取得した。取得金額は非公表だが、数十億円のもよう。買収後もFablicは存続する。

 Fablicが運営するフリルは2012年7月に、日本初のフリマアプリとしてサービスを始めた。アプリのダウンロード件数は550万件で、利用者の中核を成すのは若い女性層だ。

 楽天も2014年11月に、独自のフリマアプリ「ラクマ」を開始。出品手数料を無料にし、同社が発行する「楽天スーパーポイント」を貯められるようにするなど特色を打ち出してきた。

 楽天は「相互送客などで補完し合いながら、より効率的に顧客基盤の強化・拡大を図る」としている。例えば楽天のサービスを使う登録情報である「楽天会員ID」をフリルでもログインに使えるようにしたり、フリルで取引をすると楽天スーパーポイントを貯められたりできるようにする。

 Fablicは楽天による買収資金をテコに、利用者数の拡大を図る。施策の一例が、現在は売り上げの10%を出品者から徴収している手数料を、期間限定で無料にするキャンペーンだ。テレビCMの放映も検討する。

 ただ、Fablicの堀井翔太代表取締役CEO(最高経営責任者)は単なるCtoCの事業拡大やポイント連携にとどまらない、「決済を軸にした事業構想がある」と打ち明ける。