高さ日本一の超高層複合ビル「あべのハルカス」(大阪市)で、ブロックチェーン技術を活用した仮想地域通貨「近鉄ハルカスコイン」の運用実験が9月1日に始まった。対象は約5000人。企業が発行する仮想地域通貨としてはこれまでにない最大規模の野心的な実験だ。
利用者は現金やプラスチックカードを携行することなく、スマートフォンだけでビル内の店舗やレストランなど約200店舗で買い物ができる。ビットコインなどの普及が進む中、使い勝手や安心感を含めて一般消費者の支持を得られるかが仮想通貨の課題。実験期間が終わる1カ月後、5000人が下す評価に注目が集まっている。
スマホのカメラでQRコードを読み取るだけで
「意外と簡単なのね。これならママ友にもお勧めしたいわ」。あべのハルカスの近くに住む主婦の絹谷香奈さん(34)は、生後1カ月の乳児を抱えてあべのハルカスを訪れ、地下1階の洋菓子店で初めて近鉄ハルカスコインを使ってみた。
ギフト用に1080円のフルーツチョコをほしい旨を店員に伝えると、店員は備え付けのタブレットを操作して、画面に決済情報にリンクしたQRコードを表示した。絹谷さんは手にしたスマホで専用アプリを立ち上げ、カメラでこのQRコードを読み取る。商品名や金額を確認して、ボタンを押すと支払いが完了した。その間十数秒。
「子どもを抱えたままだと、買い物の度に財布を取り出すのは大変だとちょうど悩んでいたところだった。スマホだけでそれも瞬時に支払いが終わるのは本当にありがたい」。この日まで、仮想通貨やビットコインといった言葉すら知らなかった絹谷さん。現金やプラスチックのクレジットカードを取り出したり、店員とやり取りしたりせずに済む手軽な買い物体験に終始感心した様子だった。