写真1●防災用の位置情報自動通知サービス「ココダヨ」
写真1●防災用の位置情報自動通知サービス「ココダヨ」
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写真2●ゼネテック代表取締役社長の上野憲二氏
写真2●ゼネテック代表取締役社長の上野憲二氏
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写真3●「困った」「助けて」「無事」といったボタンで安否情報も送信できる
写真3●「困った」「助けて」「無事」といったボタンで安否情報も送信できる
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 「GPS(全地球測位システム)を搭載するスマホの普及が、自らサービスを開発する後押しとなった」。ゼネテックの上野憲二代表取締役社長は、世界初の防災向け位置情報自動通知サービス「ココダヨ」の発表会でこう述べた(写真1)。

 同社は2015年9月1日にココダヨを提供開始した(関連記事:ゼネテック、世界初の防災向け位置情報自動通知サービスを開始)。同日よりAndroid向けの専用アプリを提供している。9月中旬にはiOS向けアプリも提供予定だ。

 ココダヨは緊急地震速報などの災害発生時の警報発令をきっかけに、あらかじめサーバーに保存していた災害発生直前の家族や従業員の位置情報をスマートフォンに通知する。上野社長は同サービスの利点について「地震発生後に通信が困難な状況になる前に、お互いの位置情報を確認できる」と説明する(写真2)。

 震度5弱以上が予測される緊急地震速報が発表された場合は、アプリ画面に表示するユーザーの安否情報が「不明」になる。アプリ画面で「困った」「助けて」「無事」といったボタンを押すことで、安否情報も送信できる。位置情報や安否情報は通常時でも送信可能だ(写真3)。

 ゼネテック社長室室長(新規事業推進担当)の後藤義仁氏によると、「災害発生時の警報をトリガー(引き金)にした位置情報や安否情報の送信は、我々の特許技術によって実現している」。上野社長は「日本発、世界初のサービス」と強調した。

2007年に特許取得済みもモバイル環境が追いつかず

 ココダヨが採用している位置情報の自動通知の仕組み自体は、2007年時点で特許取得済みの技術だという。しかし、当時はGPSを搭載したスマートフォンが普及していなかったため、携帯電話の位置情報を取得するには基地局の情報を活用するしかなかった。

 上野社長はココダヨの構想を通信事業者(キャリア)に持ちかけたが、コストや手間が掛かるためビジネスとして成り立たないという理由から、実現には至らなかった。

 そんな中、2011年3月11日に東日本大震災が起こる。上野社長は「従業員や家族と連絡が取れなくなった。ココダヨがあれば次の対策を打てたと思った」と当時を振り返る。この経験から、「キャリアが動かないのなら自分たちで作るしかない」(上野社長)と思い立った。

 折しもモバイル環境は2007年とは激変していた。スマートフォンの普及が進んだことで、単独でのアプリ開発にこぎつけた。位置情報を自動送信することに関して、プライバシー上の課題もあった。これについては「事前に合意したユーザー同士でのみ情報を送信する仕組みにすることで、総務省からも問題ないとの回答をもらった」(上野社長)。

 サーバーに登録される位置情報は、通常30分に1度最新のデータに書き換えられる。最新のデータしか残らないため個人の行動は追跡できない。

 当面はトライアルキャンペーンとして無料でアプリを提供する。有料化について上野社長は「2016年4月以降に状況を見て判断する。料金は月額課金で個人向けは100~300円、法人向けは300~500円程度を見込んでいる」と述べた。

 ただ、ココダヨの展開について上野社長は「利益優先というより、防災の観点から1人でも多くの方に利用してもらいたい」と話す。基地局を利用した携帯電話の位置情報の送信についても、「引き続きキャリアに協力を求めていく。携帯電話でもココダヨと連携して、メールなどで位置情報や安否情報をやり取りできるようにしたい」(上野社長)と力を込める。