2016年1月から、マイナンバーの個人番号カード配布が始まる。総務省は、そのカードを収納できる専用ケースを配布する方向で話を進めている。ケースに入れれば、カードに記載された情報の一部を隠すことができる。
プライバシーへの配慮に加えて、カード裏面に記載されたマイナンバーなどを法定外に利用されないようにする目的がある。希望者に配るカードの枚数を、できるだけ増やそうという狙いも見える。
希望者に無償交付する個人番号カードは、表面に氏名や住所、生年月日、性別、個人番号、顔写真を記載することが法律で定められている。住所変更などで利用するサインパネル領域や、臓器提供の意思表示欄も設けられる。
マイナンバー法改正案の国会審議では、個人番号カードに記載された情報が見えてしまうことを、プライバシーの面から問題視する意見が出ていた。例えば、性同一性障害者にとって性別は知られたくない情報である可能性が高く、配慮が必要だという指摘があった。臓器提供の意思表示欄が見えないように、貼って隠すためのシールを配ろうとする動きもあった。
しかし個人番号カードに性別などを記載しないようにするには法改正が必要だ。カードにシールを貼ると、電子機器に挿入できなくなる恐れもある。そこでカードを収納するケースを配布し、性別や臓器提供意思表示欄のほか、裏面のマイナンバーも隠せるようにするという。
個人番号カードの裏面に記載されるマイナンバーは、法律に規定された手続き以外では利用できないので、例えばレンタルビデオ店がマイナンバーのあるカード裏面をコピーするのは違法となる。こうした安易な“違法コピー”を防ぐためにも、カバーが役立つのではと期待されている。
実は一部の地方自治体では、独自にケースの配布を検討していた(図)。自治体の中には、高齢者に「老人福祉カード」などの独自カードを配って、自治体の提供するサービスを利用できるようにしているところがある。ただし、自治体の独自カードは、コストや手続きの煩雑さなどの面から写真を掲載しないケースがほとんど。名前などでしかサービス利用者の本人確認ができないため、なりすましが起きる恐れがあった。