DeNA子会社のDeNAライフサイエンス(東京都渋谷区)は2015年8月27日、前年に開始した遺伝子検査サービス「マイコード」(写真1)で、がんに特化した新メニュー「がんパック」の提供を始めた。遺伝子検査市場が世界的に成長する一方、国内市場はまだ小さい。新メニュー発売でテコ入れし市場拡大を狙う。

「市場は固い」黒字化メド明言せず

 「想定より市場は固い」。同社の大井潤社長はこう漏らす。マイコードは、唾液から遺伝子情報を採取し、潜在的な生活習慣病のかかりやすさや、肥満や肌質など体質の遺伝的傾向を知れるサービスだ。第一弾の「ヘルスケア」の発売から1年が経つが、売り上げは伸び悩んでいる。今後の黒字化のメドについても「なるべく早く」(大井社長)と明言を避けた。

写真1●DeNAライフサイエンスが提供する遺伝子検査サービス「マイコード」
写真1●DeNAライフサイエンスが提供する遺伝子検査サービス「マイコード」
[画像のクリックで拡大表示]

 遺伝子検査ビジネスの市場は、中長期的な成長こそ見込まれるものの、足元ではまだ助走期間だ。シード・プランニング(東京都文京区)は、世界の遺伝子検査受託市場は2010年の3750億円が2020年に7800億円へ成長すると予測している。国内では、東大の学生が起業したジーンクエスト(東京都品川区)が2014年1月に、モバイルコンテンツを扱うMTIの子会社エバージーン(東京都新宿区)が2014年4月にそれぞれサービスを開始したが、普及には至っていない。

 遺伝子検査ビジネスが抱える課題は多い。生活習慣病の発症には環境も大きく関わり、遺伝子情報でリスクをどれだけ推定できるかは定かではない。これを誤解した利用者が判定結果に振り回されてしまう恐れもある。実際にマイコードでは「利用者が結果レポートを見て医療機関へ相談に行ってしまった」(大井社長)というトラブルも起こっている。

 科学的根拠の担保や適切な情報提供の方法などは専門家による議論の最中だ。日本遺伝カウンセリング学会は「検査を行っても発症についてのリスク推定は不確かで、まして適切な予防・治療が期待できるのはまれであり、一般臨床の場で行われるべきでない」との見解を示している。米食品医薬品局(FDA)は2014年に、米グーグルが出資する検査サービス「23andMe」の遺伝子検査キット販売の禁止を命じた。