防災の日を翌日に控えた2015年8月31日の早朝、東京・渋谷で一風変わった防災訓練が行われた。避難経路が書かれた地図の代わりに参加者が手にするのは、位置情報を使った陣取りゲーム「Ingress」がインストールされたスマートフォン。Ingressを使って渋谷の街を歩き回り、防災意識を高めるイベントだ(写真1)。

写真1●防災ガール(最前列)と訓練の参加者
写真1●防災ガール(最前列)と訓練の参加者
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 「次世代版避難訓練 LUDUSOS」と題したこの訓練を主催したのは、20~30代の女性が中心の一般社団法人、「防災ガール」。防災グッズの商品開発や研修/ワークショップの企画など、「もっと防災をおしゃれで分かりやすく」をコンセプトに活動する(写真2、写真3)。

写真2●イベントのタイトルは「次世代版避難訓練 LUDUSOS」
写真2●イベントのタイトルは「次世代版避難訓練 LUDUSOS」
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写真3●訓練開始前、防災ガールの田中美咲代表理事がスタッフに挨拶
写真3●訓練開始前、防災ガールの田中美咲代表理事がスタッフに挨拶
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 「日本は災害大国なのにも関わらず、防災力が低い。それをどうにか解決したい」(代表理事の田中美咲氏)。そのためのツールの一つとして着目したのが、現実の街を歩くことでゲームを進めるIngress。「いつどこで被災しても、自分と大切な人の安全を確保し避難できる力」を、楽しみながら身に付けてもらうことを狙った。今回の訓練は、渋谷区の後援のほか、複数の企業スポンサーの支援も得た。

スマホ片手に渋谷の街へ

写真4●朝7時、渋谷ヒカリエに集まった参加者たち
写真4●朝7時、渋谷ヒカリエに集まった参加者たち
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 メーン会場となった渋谷ヒカリエには、早朝7時に60人超の参加者が集合(写真4)。出勤前のビジネスパーソンや主婦など、20代~60代の幅広い層が集まった。遠く沖縄から駆けつけた参加者もいた。

 参加者には、「ミッション」と呼ばれる課題が12種類与えられる。個々のミッションごとに回るべき地点(ポイント)が複数示されているが、それにどんな意味があるかは事前に明かされていない。参加者は任意のミッションを選び、指定されたポイントを制限時間内に回り切る。無事ミッションを遂行できれば、難易度に応じたポイントが得られる。その総合点を、青と緑の二つの陣営に分かれて競い合う。