第一三共は、自社のMR(医薬情報担当者)約2500人が営業報告に使うスマホアプリを開発した。スマホ業務アプリを迅速に開発するための技術であるMEAP(モバイル・エンタープライズ・アプリケーション・プラットフォーム)を採用し、社内システムと連携するゲートウエイを含めて、わずか2カ月で開発を完了させた。

 MEAPは、米アップルと米IBMの提携でも焦点となった技術で(関連記事:アップルがIBMとの提携で得た技術、PaaSと「MEAP」)、現在、注目が高まっている。スマホアプリの開発ツールやひな形となるアプリ、社内システムと連携するためのゲートウエイなどから成るパッケージソフトである。米国では数年前から導入が広がっており、欧州SAPや米IBM、米コニー(Kony)などが主要ベンダーだ。第一三共は、KonyのMEAP「KonyOne」を採用した。

 開発したアプリの名称は「活動報告入力アプリケーション」。医薬品に対する医師のニーズなど営業後の活動報告を、オフィスに戻らずその場でスマホからシステムに入力できる。MRが出先で立ったまま入力しやすいよう、音声認識機能も搭載した。病名などの専門用語や医師の名前なども認識できる。iPhone版とiPad版、PC版の3種類があり、2014年2月からMRが実際の営業活動に利用している。

 開発を主導した第一三共 管理本部 IT企画部推進グループの泉貴浩主査は、「当初は、たった2カ月でできるわけがないと思ったが、結果的にはできてしまった」と語る。MRからは時間を効率的に使えるようになったとの声が上がっており、営業報告の入力件数も以前より増えるなど効果が出ているという。

事業部門から「2カ月で」との要請

 同社が今回の業務アプリを開発したのは、MRの業務効率化に加え、医療現場のニーズをより正確に収集できるようにしたいとの狙いからだ。営業報告で集まったビッグデータをテキストマイニングするなどし、「医師がその製品にどのような印象を持っているかなどを把握し、次の営業活動に役立てたい」(泉氏)との構想を持っている。

 同社には従来から、MR向けの営業支援システムがあり、営業報告を入力する機能もあったが、基本的にPCからしか使えなかった。同社のMRは、iPadやiPhoneを導入して以後、PCは持ち歩かなくなっており、営業報告はオフィスに戻ってから入力することが多かった。こうしたMRの負荷を軽減するために、既存の営業支援システムと連携できるスマホアプリを新たに開発した。

 ただし、事業部門からは「2カ月で開発してほしい」との要請があったという。当時、新製品の発売が控えており、それに間に合わせるためだ。

 そこで同社は付き合いのあったベンダー数社に相談した。しかし、どのベンダーも4~5カ月は掛かるとの回答だった。スマホアプリ自体は迅速に開発できても、既存の営業支援システムにアクセスするためのゲートウエイ機能およびそのサーバーの構築に時間を要するからだ。