米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は2016年8月10日~11日(米国時間)、年次イベント「AWS Summit NYC」を米ニューヨークで開催した。基調講演に立った米アマゾン・ドットコムCTO(最高技術責任者)のバーナー・ボーガス氏は、「年間売上高は110億ドルを超えそう。第2四半期は昨年に比べて58%伸びた」と好調な業績をアピール。続けて「革新的な技術を生むAWSは10年前と変わらない」と、新サービスや機能強化を次々と披露した(写真1)。

写真1●米アマゾン・ドットコムCTO(最高技術責任者)のバーナー・ボーガス氏
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写真1●米アマゾン・ドットコムCTO(最高技術責任者)のバーナー・ボーガス氏

 今回発表されたサービスの拡充から、AWSが推進する二つの方向性が読み取れる()。

表●AWS Summit NYC 2016で発表された主な新サービス/機能強化
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表●AWS Summit NYC 2016で発表された主な新サービス/機能強化

 一つは、インフラ管理の効率化から、アプリ開発重視へ軸足を移してきたこと。コンテンツをベースにした新たなロードバランサー「Application Load Balancer」の投入が象徴的である。

 もう一つは、手軽にアナリティクスを実践するための環境整備だ。SQLを使用してリアルタイムにストリーミングデータを処理する「Amazon Kinesis Analytics」の提供や、EC2用のブロックストレージ「Amazon Elastic Block Store(EBS)」の価格性能比向上などがその路線上にある。

レイヤー7でルーティング

 従来のロードバランサーが仮想マシンに対して処理を振り分けるのに対して、Application Load Balancerはコンテンツベースで動作する。

 OSI参照モデルのレイヤー7(アプリケーション)で実行され、HTTPヘッダーの中身を調べてルーティングを行う。例えば、URLパスに「/api」が含まれるリクエストをグループAに、「/mobile」が含まれるものをグループBに送るような処理が簡単に実現できる。

 プロトコルとして、HTTP/2とWebSocketに新たに対応した。東京リージョンを含むAWSの全リージョンで利用可能である。ボーガス氏が「これまでのロードバランサーに比べて、スピードが速いだけでなく、コストも削減できる」と話すように、「Classic Load Balancer」と改称した従来版に比べ、Application Load Balancerの1時間当たりの利用料金は10%安い。

 Application Load Balancerの発表では、AWS のコンテナサービス「Amazon EC2 Container Service(ECS)」と組み合わせる手法も紹介した。コンテナ上のアプリケーションで利用できると強調し、コンテナを活用したマイクロサービス化を支援する姿勢も鮮明にした。

ストリーミングデータ分析を手軽に

 AWS上で、アナリティクス環境を充実させる発表も相次いだ。今回発表したAmazon Kinesis Analyticsは、ストリーミングデータ分析の活用に向けたサービス。ここで言うストリーミングデータとは、センサーデータやログといった連続発生するデータを指す。これを、SQLを使って手軽に分析できるようになる。