ソニーから日本産業パートナーズへのPC事業譲渡を受けて、2014年7月1日に設立されたVAIO株式会社(VAIO)。8月13日には、VAIOブランドとして初の製品を発売した。VAIOによると「発売前の受注段階と比べて売れ行きは非常に好調」という。

VAIO株式会社の本社(長野県安曇野市)
VAIO株式会社の本社(長野県安曇野市)
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 ただ、同社が置かれている現状は厳しい。7月1日の設立会見でVAIO代表取締役社長の関取高行氏は、「小さな会社なので黒字にしなければやっていけない」と語り、初年度から黒字化を目指すことと、そのために初年度の販売台数について30万~35万台という目標を掲げた。

 初年度の黒字化を達成する上で、同社には「事業規模の縮小」「法人市場での存在感の薄さ」「ユーザーのPC離れ」という三つの試練が立ちはだかる。

 一つめの試練である事業規模の縮小は、販路や製品ラインアップ、販売台数、部材の調達コストなど様々な面に影響を与える。

 ソニー時代は1000人以上いた社員が240人になった。関取氏が「選択と集中を徹底する」という通り、当面は国内市場に絞って製品を販売する。販路もソニーマーケティング(SMOJ)と販売総代理店契約を結び、基本的にはオンラインのソニーストアでの販売が中心となる。

 製品のラインアップも大幅に減らした。ソニーブランドでの最後の発表となった2014年春モデルでは、標準仕様の店頭販売向け製品だけで4シリーズ11モデルあった。これに対して、VAIOブランド第1弾は「VAIO Pro 11」「同13」「VAIO Fit 15E」の2シリーズ3モデルのみ。

 ソニー時代の2013年度における国内販売台数は70~80万台程度だった。一方、販路を直販中心にし、製品のラインアップも絞った中で初年度の目標販売台数が30~35万台というのは、相当に高いハードルだ。

 事業規模の縮小は部材の調達コストの増加にも直結する。マーケティング・セールス/商品企画担当の花里隆志執行役員は、部材の選定をより厳しくすることでコストを抑えていくという。「いままでは顧客の価値に必ずしもつながらない部分でも、独自のチューニングをかけるなど無駄にコストをかけていた。もちろん、他社との差異化部品にはこれまで同様にお金をかけるが、それ以外は標準部品を使うことでコストを抑える」。