EC(電子商取引)のスピード競争の単位が、「日・時間」から「分」へと短縮されそうだ。号砲を鳴らしたのが国内最大手の楽天。最短20分で配送する「楽びん!」を8月20日に都内一部地域で開始。一定の商品在庫を載せた配送車を対象エリア内に巡回させ、年中無休で24時間いつでも顧客の元へと駆けつける体制を整えた。品目数は日用品など450点を揃えた。

 分刻みのEC戦争はすでに米国で激化しており、日本に飛び火した格好だ。日本でもベンチャーのベントー・ドット・ジェーピーが今春先行して始めており、今後大手流通や家電量販店などが追随する可能性がある。

徹底的に時間短縮を追求

写真1●「ECをもっと日常的に使ってもらいたい」と語る中西氏(右)
写真1●「ECをもっと日常的に使ってもらいたい」と語る中西氏(右)
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 「EC業界は常に配送スピードを追求してきたが、加えて受け取りの手間も減らさなければならないと考えた」。楽びん!の開発を率いた、新サービス開発室の中西勝也氏は、開発の背景をこう説明した(写真1)。

 わずか20分の配送が実現できた秘密は、利用者や配送車の位置情報を基にスタッフへ行動を指示する独自システムにある。注文が入ると、配送車の場所や商品在庫を注文内容・配送場所と照らし合わせ、最短時間で届けられる配送車を導き出す。スマートフォンでタクシーを配車するサービスを進化させたようなイメージだ。

 顧客が使うスマートフォンの専用アプリにも独自の工夫がある。通常ECでは商品を選んでから配達場所を指定するが、手順を逆転。まず配送場所を選ばせ、配送時間の目安を示し、その後で商品を選んでもらうようにした。

写真2●アプリから配送時間や配送スタッフを確認できる
写真2●アプリから配送時間や配送スタッフを確認できる
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 演出にもこだわった。配送場所を決めた段階で配送時間の目安を表示し、注文を決定すると正確な到着予想時刻を表示。その後も配送車の位置を地図上でリアルタイムに表示し、到着直前には画面がポップアップして知らせてもらえる(写真2)。