働き方改革が注目を集めるなか、モバイル端末をはじめとするITを使って会社のオフィス以外で仕事をする「テレワーク」の導入に乗り出す企業が増えている。2014年からテレワーク制度を試行している日本航空(JAL)はその1社だ。

 JALは2017年7月から8月にかけて、テレワークの新たな形態を試みている。その名は「ワーケーション」。働くという意味の「ワーク」と休暇の「バケーション」を組み合わせた造語で、実家やリゾート地などの旅行先で休暇を楽しみつつ、テレワークもする働き方を指す。

 欧米では個人事業主(いわゆるノマドワーカー)を中心に広まりつつあるという。日本で組織としてワーケーションに取り組んだ例はほとんどない。

 JALではワーケーションを「電話やWi-Fiがつながり、一両日中にオフィスに戻ってこられる場所でテレワークをすること」と定義。デスクワーク主体の社員4000人から希望者を募り、国内外のリゾート地や帰省先、地方などでのワーケーションに取り組んでいる。既に箱根の温泉街などでワーケーションを実践したという。

写真●ワーケーションに取り組むJALの社員
写真●ワーケーションに取り組むJALの社員
(出所:日本航空)
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有給休暇の完全取得を目指す

 JALはなぜワーケーションに取り組むのか。人財戦略部ワークスタイル変革推進グループの久芳(くば)珠子アシスタントマネジャーは狙いとして「年次有給休暇の完全取得」を挙げる。

 同社のデスクワーク主体の本社部門における年次有給休暇の取得日数は、2016年度は平均17日。前年度に比べて2日多い。「これまでのテレワークの成果が表れている」と久芳アシスタントマネジャーは評価する一方で、20日の完全取得を目指すのは新たな方策が必要だと考えていた。それがワーケーションだ。

 休暇を取って5日間の家族旅行を計画し、ホテルを予約した。ところが、その後に急な仕事が入り、旅行をキャンセルせざるを得なくなった。JALでは、このようなケースが多忙な管理職に多かったという。