「開業率倍増に向けたベンチャーエコシステムを作り、産業の新陳代謝を進める」――。今秋にも経済産業省が創設する「ベンチャー創造協議会」の目的を同省 経済産業政策局 新規産業室 新規事業調整官の石井芳明氏はこのように述べる。

 具体的には、(1)大企業とベンチャー企業のマッチング、(2)大企業からのスピンアウト(資本関係を残さない事業の切り出し)の支援、(3)安倍首相が創設を表明した「ベンチャー大賞」候補企業の推薦、(4)講師派遣などを含めた起業家教育の推進――などを主に担う。

 協議会には、大企業、ベンチャー企業、ベンチャーキャピタル(VC)やインキュベーター、さらには技術移転ベンチャーの創業などにも取り組む産業技術総合研究所(産総研)や、研究開発型ベンチャー向けの起業家支援プログラムを提供する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などの参加も想定している。

 参加するベンチャー企業は、同省の「新事業創出のための目利き・支援人材育成事業」における“目利き”から一定の推薦を得るなどの条件を課す予定だ。

 大企業からの参加は、NECが既に表明しているほか、過去に経産省が主催したイベントや会議に参加した企業などが中心になるとみられる。「広く経済団体などにも声をかける」(石井氏)という。

エコシステムに大企業を引き込む

 経済産業省は、これまでも大企業とベンチャー企業との協業を促す施策に取り組んできた()。ただ、取り組むべき課題の洗い出しや先行・先進事例の共有、“出会い”の場作りなどが中心。大企業が不可欠なピースとして存在するような、ベンチャーを生み育てるエコシステムは、いまだ出来上がっているとは言えないのが現状だ。

図●経済産業省が関わった大企業とベンチャー企業の提携・協業促進の取り組み(2013年末以降の主なもの)
図●経済産業省が関わった大企業とベンチャー企業の提携・協業促進の取り組み(2013年末以降の主なもの)
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