スターバックス コーヒー ジャパンの2020年までのIT戦略が取材によって分かった。IT戦略の名称は「ONWARD(未来へ)」。顧客接点の強化や新サービスの創出といった“攻めのIT”を強化する方針だ。

 ONWARDは米スターバックスの事実上の創業者であるハワード・シュルツ氏が事業を再生するときに従業員に向けて使った言葉である。IT戦略を立案した亀山博史インフォメーション テクノロジー本部長は「IT戦略は単なる実行計画になってしまっては意味が薄れる。部員のモチベーションを高めるような『思い』が込められていなければならない。デジタル化によって、新しいビジネスを実現するという決意を含めるため、シュルツの言葉を使った」と話す。

写真1●スターバックス コーヒー ジャパンの亀山博史インフォメーション テクノロジー本部長
写真1●スターバックス コーヒー ジャパンの亀山博史インフォメーション テクノロジー本部長
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 具体的な施策についても、IT部員を奮い立たせるように言葉を選んだ。ONWARDは、Optimize(最適化)、New(新しい)、Wall(壁)、Advance(前進)、Romance(ロマンス)、Dynamic(動的な)の六つのテーマからなる。各テーマの頭文字を取るとONWARDになるというわけだ。各テーマに応じて、システム構築プロジェクトを進めている。

スターバックス コーヒー ジャパンのIT戦略「ONWARD」の骨子
頭文字テーマテーマの概要主な施策の例
OOptimize業務/システムの最適化iPadを活用した、店舗業務の効率化
NNew新サービスの実現ドライブスルー店舗でのカメラを使った接客(実証実験)
WWallガバナンス強化米SOX法準拠、米本社基準のセキュリティ対策
AAdvance新技術の積極活用クラウドファーストの実践やネットワーク刷新
RRomance顧客の心を動かすスマホアプリによるモバイル決済の実現
DDynamic既存の枠組みを変えるソフトライセンスをグローバル契約に変更

 六つのテーマのなかで、最も重視しているのがRomanceであるという。IT部門の施策としては耳慣れない「ロマンス」という言葉を使うことに大きな意味があると亀山氏は説明する。

 「日本でロマンスと言うと、恋愛小説かと思われるかもしれないが、そうではない。米本社では、お客様にワクワク・ドキドキを感じていただく、お客様の感情を揺さぶる、といった意味で使われる。スターバックス社内ではとても大切に使われている言葉だ」(亀山氏)。サービス開発や店舗運営などで使われる、自社特有の言葉を使うことで、IT部員が事業に貢献していることを実感させる狙いだ。