大手ITベンダー4社の2016年3月期第1四半期連結決算が出そろった()。日立製作所とNTTデータが増収増益を果たした一方、富士通とNECは減収、営業利益で赤字と明暗が分かれた。国内のシステム開発は堅調、通信・ネットワーク関連事業は不振という構図は各社共通だが、富士通とNECはPC事業が足を引っ張った。

表●大手ITベンダーの2015年4~6月期の業績
表●大手ITベンダーの2015年4~6月期の業績
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 日立の売上高は前年同期比6.9%増の2兆3140億円、営業利益は同2.7%増の1153億円。四半期連結決算で初めて、海外売上高比率が50%を上回った。「情報・通信システム」部門の売上高は前年同期比7.2%増の4516億円、営業利益は同3.5%増の89億円と増収増益。北米でのシステム開発案件が好調だったほか、国内では「海外展開を進める金融機関、マイナンバー対応を進める公共機関が積極的にIT投資をしている」と、日立の中村豊明執行役副社長CFO(最高財務責任者)は語る。

 NTTデータも増収増益だ。売上高は前年同期比6.8%増の3586億円、営業利益は同174.1%増の151億円だった。利益面の好調を支えた要因の一つが、2013年度以来、苦しんできた大型不採算案件の改善だ。「継続的に大きい案件が6件あったが、ほとんどが稼働した。1件残っているが、不採算額は拡大していない」(NTTデータの椎名雅典代表取締役副社長執行役員)。

 好調なスタートを切った日立、NTTデータとは対照的に、富士通とNECは苦しんだ。主な要因はWindows XPの切り替え需要が一巡したPC事業と通信キャリアの投資抑制が続くネットワーク関連事業だ。

 富士通の売上高は前年同期比0.3%減の1兆651億円、営業損益は前年同期から346億円悪化し、273億円の赤字に転落した。金融、公共など国内のシステム開発は好調だったものの、PC事業とネットワーク事業が落ち込んだ。

 PC事業の採算は約150億円悪化した。PCの出荷台数が前年同期比で3割減少したほか、為替影響で調達コストが上がったことが主要因だ。ネットワーク事業では組織再編に50億円を投じるなどし、利益ベースで約160億円悪化した。

 NECは売上高が前年同期比2.0%減の5866億円、営業損益は同30億円減で101億円の赤字だった。製造・流通向けが堅調だったが、PCとネットワークが振るわなかった。「通信キャリアの投資抑制、Windows XP更新需要の反動が想定よりも響いた」と、NECの川島勇取締役執行役員常務CFOは振り返った。

 出遅れたように見える両社だが、「計画通り」と口をそろえる。富士通の塚野英博取締役執行役員常務CFOは、「受注状況は好調。確実に売り上げに結び付けていけば、通期予想は達成できる」と力を込める。