会計検査院は2017年7月26日、マイナンバー制度で行政機関などが個人情報をやりとりするための情報連携システムについて報告書を公表した。業務見直しの範囲や手順の検討などが不十分だったために、厚生労働省などは改修や契約変更に約35億円の追加支出が必要になったり、開発の遅延が生じたりしているという。

 国や健康保険などの公的機関はマイナンバー制度に対応するために、情報連携の対象となる個人情報を各行政機関の既存システムから集める「中間サーバー」を整備して、個人情報をやりとりする「情報提供ネットワークシステム」につなげなければならない。情報連携は2017年7月から試験運用が始まった。

要件定義に不備

 会計検査院は2012年度から2016年度にかけて厚生労働省など国の行政機関と、全国健康保険協会や健保組合などの合計170機関が整備した190システムについて準備状況を調べた(写真)。検査対象となったのは2016年10月末まで国の補助金が計100万円以上だった契約件数503件、合計の契約金額は650億5451万円に上る。

写真●会計検査院が公表した報告書
写真●会計検査院が公表した報告書
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 このうち厚生労働省は2015年6月に財務省所管の国家公務員共済組合の既存システムについて、処理している業務量やデータの内容などを分析せずに業務要件を決めてしまい、中間サーバーを利用する要件を定義していなかった。

 その結果、契約を結んだ後に要件定義の見直しが必要になり、他の仕様変更を含めて2回の変更契約を締結して契約金額を33億9607万円あまり増額していた。当初から必要だったコストも含まれるとみられるものの、情報連携の開始時期は2018年7月に延期した。

 文部科学省がマイナンバー制度に対応する「高等学校等就学支援金事務処理システム」の設計・開発の調達などでも、業務や調達仕様書案の見直しが必要となった。

 変更契約や追加契約によって合計の契約金額は同様に5940万円増額して1億5120万円となり、情報連携の開始を2019年4月に延期していた。ハローワークシステムの整備でも不備があり、2017年度中に機能追加の改修をしているという。