通称「日本版IFRS(国際会計基準)」が約1年の検討を経て、ついに姿を現した。日本の会計基準の策定主体である企業会計基準委員会(ASBJ)は2014年7月31日、日本版IFRSの草案を公開。10月31日までコメントを募集し、寄せられた意見を基に草案を修正したうえで、金融庁が制度化に向けた作業を進める。

 ITベンダー各社は、日本版IFRSの登場が新たなビジネスチャンスにつながると期待をかける。日経コンピュータの調べで、オービックビジネスコンサルタント、スーパーストリーム、富士通マーケティングなどのERPパッケージ(統合基幹業務パッケージ)ベンダーが、日本版IFRS対応機能の提供を計画していることが判明した。

「JMISはIFRSではない」と明言

 日本版IFRSの正式名称は、「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」、英語表記は「Japan's Modified International Standards(JMIS):Accounting Standards Comprising IFRSs and the ASBJ Modifications」である。「国内外の関係者と話をしたうえで、金融庁と共に考えて、この名称に決めた」と、ASBJの小賀坂敦副委員長は7月31日に開催した記者会見で説明した。その際に、IFRSの策定主体であるIASB(国際会計基準審議会)とも「コミュニケーションを取った」(同)という。

 日本版IFRSすなわち修正国際基準(JMIS)とは、IFRSを構成する基準の一部を削除/修正したもの(エンドースメントされたIFRS)を指す。公開草案では「のれん」「当期純損益」に関してIFRSを削除/修正。その箇所には、ASBJが策定した「修正会計基準」を適用するとしている()。

図●ASBJが1年にわたり議論してきた「日本版IFRS」の概要
図●ASBJが1年にわたり議論してきた「日本版IFRS」の概要
IFRSの基準と、ASBJが策定した「修正会計基準」で構成する
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