NTTデータは2023年までにAPAC(アジア太平洋地域、中国を除く)での売上高を3~4倍に引き上げる。APACの2015年3月期売上高は約250億円と見られ、2023年には最大1000億円までビジネスを拡大させるもくろみだ。成長のテコとなるのは顧客と協業する“共創ビジネス”。自ら投資して顧客と共にITで市場を創り出す。「顧客のビジネスを侵すべからず」という日本本社の不文律が届かない地で、新しいシステムインテグレーターの姿を追求する。

NTTデータのAPAC(アジア太平洋地域)法人で社長CEO(最高経営責任者)を勤める深谷良治氏
NTTデータのAPAC(アジア太平洋地域)法人で社長CEO(最高経営責任者)を勤める深谷良治氏
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 Beyond IT――。NTTデータのアジア太平洋地域子会社でCEO(最高経営責任者)を勤める深谷良治氏は2015年5月、インドやオーストラリア、シンガポール、タイ、ベトナム、ミャンマーといったAPAC各国の子会社トップを集めた会議で、今後のAPACビジネスの方向性をこう掲げた(写真1)。ポイントを深谷氏は次のように説明する。「NTTデータが顧客をリードして共に市場を創り出していく共創ビジネスをしかけてき、そこで生んだ事業は主体的に当社で運営する。我々が従来得意としてきたIT、つまりシステム構築・運用ビジネスの枠を超えて、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)や従量課金型のサービスでも儲ける」。

 時には過半を出資して市場を育てていくという。「リスクは当然あるが顧客と同じ船に乗るからこそ本気になれるし、市場が大きくなった時の実入りも大きい。市場が伸び出してから船に乗ろうと思ってももう遅い」(深谷氏)。

 日本ではBeyond ITは考えられない。「顧客と競合するようなビジネスをしない、というのが創業時からの伝統」(関係者)だからだ。あくまでITの枠に収まる受託ビジネスが正しく、「レベニューシェア型ビジネスもいくつかあるが総じてうまくいっていない。今は自粛ムードだ」(同)。