建設大手の大林組はKDDIやNECと共同で2017年9月に5G(第5世代移動通信システム)を使った実証実験を始める。離れた場所から建設機械を操作する「遠隔施工」に役立てる。

 遠隔施工は災害現場で既に導入されている。大林組の古屋弘技術本部上席主席技師は「2016年4月の熊本地震でも復旧作業などで活躍した」と説明する。運転者は建機に乗らずに、災害現場から送信された映像を見ながら安全に操作できる。

 運転者にとって目の代わりとなるのは、建機の操縦席に取り付けたカメラだ。現場の様子を撮影して遠隔拠点に設けた制御室に送る。

実証実験に使う油圧ショベル
実証実験に使う油圧ショベル
写真提供:大林組
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高精細4K映像で操作性改善

 実証実験では、大容量で高精細な映像データを送れる5Gを遠隔施工に導入して効果を確める。古屋氏は「映像の解像度が上がれば運転者は作業しやすくなる」と話す。作業時間を減らす効果が期待できるという。

 解像度を上げると災害現場の状況をより正確に把握できる。例えば土砂災害では、土砂が崩れやすそうな地点を見分けるのに役立つ。解像度が低いと土砂の状況などを正確に見分けられない場合があったという。

 現在の遠隔施工は解像度が低いXGAの映像データしか伝送できなかった。これまで大林組は無線LAN規格のIEEE 802.11gを使っており「この方式では伝送容量が低く、解像度を上げられない」(古屋氏)。