日本航空(JAL)は2017年7月中にも、米ドーモが提供するクラウドベースのセルフサービスBI(ビジネスインテリジェンス)ツール「Domo(ドーモ)」の本格運用を始める。SNS向けに発信した自社情報の効果測定に使うもので、複数のSNSからの効果測定データをDomoのダッシュボードに集約して表示し、効果測定の効率を大幅に高める。

JALはSNSで発信した記事に対する反響を、Domoで集計しグラフで分かりやすく表示させている
JALはSNSで発信した記事に対する反響を、Domoで集計しグラフで分かりやすく表示させている
(出所:日本航空)
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従来の効果測定ツールに二つの不満

 SNSで自社の製品・サービスに関する情報を発信する企業は多いが、発信すれば必ず効果があるとは限らない。例えばTwitterでは、投稿したコンテンツが他のユーザーのつぶやきと共にタイムライン上でどんどん流れていくし、FacebookやInstagramで投稿しても、JALの公式アカウントをフォローしているユーザーの15%程度にしか届かないという。

 「どんな時間にどんな内容で発信すればより多くの人に見ていただけるのか。私たちの投稿を待ってくださるユーザーの方々に確実に届けたい」。JALでDomo導入の陣頭指揮を執ったコーポレートブランド推進部Webコミュニケーショングループの山名敏雄グループ長は、導入検討の背景をこう話す。

 JALはこれまでもSNS投稿の効果を測定していた。どれだけ多くの人に閲覧されたかを示す「リーチ率」と、投稿に対し「いいね!」をしたりコメントを書き込んだり、投稿をシェアしたりといった行動を取る「エンゲージメント率」を個々の投稿について確認し、どのような投稿が効果的かを判断する指標としていた。

 ただ、JALは従来の効果測定ツールに対して二つの不満があったという。一つは効果測定ツールがバラバラで、SNSごとにツールを切り替えながら測定する必要があったこと。もう一つは各SNSの効果測定ツールの機能があらかじめ決められており、独自の分析をしたくても難しかったことだ。「投稿内容は毎週の編集会議で練りに練っていたが、それに比べると投稿後の効果測定は手薄だった」(山名グループ長)。

コネクターの豊富さや料金でDomoを選択

 単一の画面で複数のSNSを横断的に効果測定したい。しかもツールの機能に縛られず、JALが考える重要業績評価指標(KPI)に基づいて自由自在に分析したい――。山名グループ長らはこうした問題意識から新しいツールの導入を考え始め、ツールベンダー各社に声を掛けて具体的な検討を始めた。

 2016年11月ころから、6~7社のツールを比較検討し、Domoを選んだ。ポイントとなったのは3点。第一に、各SNSからデータを収集する際に必須となる、API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)のコネクターがどの程度整備されているか。「機能として『つながる』と言っていても、実際につないでみないと何ができるか分からない」(山名グループ長)と考え、実際にデモなどを見ながら検討した。

 第二に、各ベンダーのコンサルタントがどの程度SNSに知見を持っているか。「実際に自社用の効果測定システムを構築するに当たり、ツールだけ販売してその後は面倒を見てくれないようでは困る。コンサルタントがSNSにどの程度詳しいかは大きな判断材料になった」(山名グループ長)。

 第三に、基本料金でどれだけ多くのデータを蓄積できるかだ。大きなアドバンテージになったとするのは、Domoは保有できるデータ容量に上限がなかったこと。「運用開始後にデータ量が増えてきた段階で追加料金がかかる心配がなかった」(山名グループ長)。