2017年5~6月にかけ、ストレージ製品を手掛ける大手IT企業各社が、ハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)の新製品や機能強化を相次いで発表した。各社の発表に共通するのは、基幹系など応答性能や信頼性への要求が高い用途への適応力を強調している点。

 中~大規模の企業情報システムの場合、基幹系のような性能や信頼性を要求する用途のストレージには、SANストレージ専用機を採用するのが一般的だった。ストレージ大手にとって稼ぎ頭ともいえる領域である。この領域を浸食しかねない製品に、ストレージ製品の大手各社が本腰を入れてきた格好だ。

 HCIは一般に、SANストレージ専用機とサーバーを別々に用意するよりも割安なことが多い。確かに、HCIの機能強化が各社のうたい文句通りの効果を発揮するのであれば、基幹系などの用途にもユーザーの採用が進みそうだ。もちろん、SANストレージ専用機の需要がすぐになくなるわけではないが、数年後に振り返ってみると、「2017年がSANストレージ専用機の終わりの始まりの年だった」と位置づけられる可能性は十分にある。

専用機譲りのQoS機能で応答性能を担保

 HCIは複数台のサーバーにソフトウエアを組み込み、コンピューティング、共有ストレージ、仮想化環境、ネットワークといった各種機能を統合して利用できるようにしたアプライアンス。2017年5~6月の各社の発表では、SANストレージ専用機きめ細かな機能を強化した点が目につく。具体的には、応答性能を確保するQoS機能や、データの重複排除・圧縮のハードウエア処理、データの暗号化機能などである。

 例えばネットアップは、米国で6月5日に発表した同社初のHCI製品「NetApp HCI」において、先行製品が抱える応答性能の課題を克服したとアピールする。従来のHCIは、複数のアプリケーションを利用するときに、あるアプリケーションのデータ処理が別のアプリケーションの処理に悪影響を及ぼすケースがしばしば見られるという。

 これに対し、NetApp HCIはストレージ機能を既存のオールフラッシュストレージ製品「SolidFire」をベースに開発。用途ごとに必要なI/O性能を割り当てるQoS機能を受け継いでいる。ネットアップ システム技術本部の近藤正孝常務執行役員CTOは、「簡単な設定で性能を確保できる」と話す(写真)。「用途ごとにI/O性能をきめ細かく設計したいユーザーでなければ、基幹系などの用途にもNetApp HCIで十分に実用になる」(近藤氏)。

写真●「NetApp HCI」について説明するネットアップ システム技術本部の近藤正孝常務執行役員CTO
写真●「NetApp HCI」について説明するネットアップ システム技術本部の近藤正孝常務執行役員CTO
[画像のクリックで拡大表示]

データ容量の節約やデータ保護も専用機並みに

 2017年6月15日にHCIの新製品「HPE SimpliVity 380」の提供を開始した日本ヒューレット・パッカードも性能面の強化をアピールする。ただし、アプローチは異なる。データ容量の節約に有効な重複排除や圧縮を、専用のFPGAアクセラレーターカードを搭載して実現した。