写真1●船級検査世界シェア2位の日本海事協会
写真1●船級検査世界シェア2位の日本海事協会
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 日本海事協会(ClassNK、写真1)が船のセンサーデータを収集・蓄積するシステムを構築し、船舶IoT(インターネット・オブ・シングズ)の取り組みを本格化させている。船体や、その構成部品のセンサーからデータを収集・蓄積し、そのビッグデータを運航効率化などに生かす。

 2016年6月までにコンテナ船とタンカーの2隻でデータ収集を始めた。早期にデータ収集対象船を5隻程度まで増やす。

 蓄積したデータは、一定のアクセス管理をしたうえで、船主や造船・部品メーカーにAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)で提供。保守・検査の基礎データとして活用したり、気象データと組み合わせて燃費を抑制できる運航ルートを導き出したりすることを目指す。

 システムの名称は「シップデータセンター」。日本海事協会は、システムの運営子会社として同名のシップデータセンター(東京・千代田)を設立。システム構築は富士通が担当した。

 日本海事協会は1899年創立の一般財団法人。自動車における車検に当たる「船級検査」サービスを提供する。世界シェアは20%程度で業界2位。日本船籍船向けサービスは全体の8%のすぎず、外国船向けの比率が高い。

他業界のIoTの流れが船にも波及

 産業用機械分野でのIoTの取り組みは珍しくない。コマツが建機にセンサーを付ける「KOMTRAX」がよく知られている(関連記事:コマツがライバルに勝った理由 IoTは経営者の意思で決まる)。海外では航空機エンジンや電気機関車などを製造する米ゼネラル・エレクトリック(GE)が先行する(関連記事:GE流、変革を促す3つの“エンジン” “IT企業”のGE、10億ドル投資)。これらの仕組みでは、原則としてメーカーとシステム運営者が同一で、メーカーが自社製品・サービスの競争力を高めるためにシステムを運営している。

 だが、これまで船舶業界の動きは鈍かった。シップデータセンターの永留隆司代表取締役社長は「船の世界でもIoTやビッグデータが重要だという考えはあったが、運営を主導するところがなかった。そこで、第三者機関である日本海事協会が運営することにした」と説明する。