「本日中にこの商品のご案内をした方がいいですよ」。都内の大和証券の営業店で働く担当者が出社してCRM(顧客関係管理)システムを開くと、このようなメッセージが表示された。顧客の氏名とともに、顧客が関心を示しそうな投資信託の銘柄も表示されている。

 このメッセージのアドバイスに従って営業担当者はその日のうちに顧客に連絡し、商品購入に結び付けることができた――。

 これは、大和証券が社内で利用拡大を進めているAI(人工知能)の活用シーンである。CRMシステムが表示しているのは、これまで同社が蓄積してきた顧客情報とマーケット情報のデータベース(DB)を基に、機械学習などのAI技術で分析した結果だ。

 Webサイトのアクセスログも収集しており、顧客が現在関心を持っている商品をAIが推定する。この推定に基づき、株式、債券、株式投資信託、ファンドラップといった商品を適切なタイミングで提案する。

右から大和証券の大堀崇志営業企画部AI推進室次長、長谷川理営業企画部AI推進室長、大和総研の森岡嗣人フロンティアテクノロジー本部フロンティアテクノロジー第一部上席課長代理
右から大和証券の大堀崇志営業企画部AI推進室次長、長谷川理営業企画部AI推進室長、大和総研の森岡嗣人フロンティアテクノロジー本部フロンティアテクノロジー第一部上席課長代理
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 大和証券の長谷川理営業企画部AI推進室長は「AIを使った仕組みを開発してから2年近くが経過し、ようやく社内に浸透してきた。今後さらに適用先を広げ、フル活用していくつもりだ」と話す。

 分析結果を基にしたアドバイスの種類は日々増やしてきた。「この半年間で2.5倍に拡大した」と大堀崇志営業企画部AI推進室次長は説明する。配信する件数も2017年1月に比べると約5倍になった。