総務省は2017年6月、格安スマホを手掛けるMVNO(仮想移動体通信事業者)の新たな支援策を公表した。MVNOは携帯電話大手から回線を借りる際、通信料だけでなく、様々な費用を負担している。今回の支援策はこれら費用の透明性や公平性を高める取り組みが中心であり、一部については総務省が妥当性を厳しくチェックする。

 あまり注目されていないが、MVNOにとっては意義が大きい内容となっている。

 総務省は今回の支援策に先立ち、MVNOへのアンケートやヒアリングを実施。本題は電気通信市場の分析と検証だが、MVNOの不満や課題を丁寧に聞き取り、用意周到に準備を進めてきた。5月31日開催の有識者会議(電気通信市場検証会議)でMVNOの課題を報告すると、6月23日には解決策(MVNOの新たな支援策、電気通信事業法施行規則等の一部を改正する省令案)を公表する早業を見せた。

総務省がアンケートやヒアリングに基づいてまとめたMVNOの主な課題と解決策
総務省がアンケートやヒアリングに基づいてまとめたMVNOの主な課題と解決策
出所:総務省
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 支援策は多岐にわたるが、注目は携帯電話大手が設定する回線管理機能とSIMカードの料金の算定方法を決め、算定根拠の届け出まで義務化した点だ。

 前者の回線管理機能は、伝送路設備に関する情報の管理や端末の認証などを担う機能であり、MVNOは契約数に応じた費用を負担している。回線当たりの費用はNTTドコモが月97円、KDDI(au)が月82円、ソフトバンクが月81円。MVNOからは「算定方法が不明で公平妥当性に疑問」とする意見が出ていた。

 一方、後者はSIMカードの貸与料金。2015年度まではMVNOの費用負担がなかった(厳密には他の費用に含まれていたとみられる)が、NTTドコモが2016年8月に「USIMカードの貸与に係る費用」(1枚当たり394円)を新設。すると、KDDIも2016年10月に「au ICカードの貸与に係る費用」(当時は同356円、現在は同406円)、ソフトバンクも2017年2月に「3Gチップの利用に係る費用」(同384円)を設けて追随した。

 やはりMVNOからは「算定方法が不明で公正妥当性に疑問」とする意見が出ており、「大手3社の調達規模を考えれば明らかに利益を乗せすぎ」(業界関係者)といった声まである。

 今後、期待されるのは、これらの料金の低廉化。回線管理機能、SIMカードともに通信の成立に不可欠な要素であるという理由から、総務省が算定根拠を厳しくチェックして適正性を確保することにした。特にSIMカードの貸与料金については算定方法を新たに定めただけでなく、「原価+適正利潤」という必要最低限の水準で提供することも明記した。