通信サービスへの苦情や契約トラブルを減らすべく、消費者保護を強化した改正電気通信事業法が2016年5月に施行されてから1年余り。携帯電話の販売店では、料金プランや契約条件などを丁寧に説明し、消費者の理解を確認しながら契約を結ぶ取り組みが強化されたはずだった。

 しかし総務省は6月28日、料金プランや契約条件などの説明が不十分だったとして、携帯電話大手3社に行政指導を行った。主たる根拠になったのが、総務省が大手3社の販売店で実施した覆面調査の結果だ。

参考記事:「2年縛り」など契約時の説明が不十分、総務省が携帯3社に行政指導へ

 調査員が契約希望者を装って販売スタッフの説明を受けたところ、いわゆる「2年縛り」の割引プランなど料金関連の説明が不十分だったケースが軒並み6割を超えた。法改正で導入された、契約時の説明が不十分だった場合などに8日以内の申し出で契約を解除できる新制度については、「説明がなかった」とされたケースが8割に達した。

手続きの接客時間は10~20分伸びている

 結果を公表した総務省の会合では、販売店の代表者が「違和感を抱かざるを得ない結果だ」と漏らすなど、関係者の衝撃は大きかった。携帯大手3社と系列の販売店は説明用のツールなどを充実させ、研修を増やすなどして、法改正に臨んだはずだったからだ。

 販売店で組織する「全国携帯電話販売代理店協会」(全携協)によれば、説明と契約手続きに費やす接客時間は以前の1人当たり30分~1時間から、法改正後に10~20分程度伸びたという。特に、65歳以上の高齢者は特に強い説明義務を果たす必要があり「現場の負荷は明らかに増えている」と全携協の竹岡哲朗会長は説明する。

全国携帯電話販売代理店協会の竹岡哲朗会長
全国携帯電話販売代理店協会の竹岡哲朗会長
写真はテレコムインサイド誌2015年8月号でインタビューした当時のもの。撮影:新関 雅士
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 販売スタッフが費やす接客時間は長くなり、現場の負担感は増している。それでも今回の調査からは、販売店での説明は不十分で法改正に対応できていないという。携帯電話販売の現場でどのようなことが起こっているのか。

 今回の覆面調査は、民間の調査期間に委託して2017年1~3月にかけて実施。全国の販売店で携帯電話1社につき約100回、計300回弱の契約手続きを覆面で調べている。契約を装って一通りの説明を受けたら契約直前で辞退し、退店後に調査票を埋めるという方法である。総務省が関係者を集めて6月22日に開いた「消費者保護ルール実施状況のモニタリング定期会合」の第3回で公表された。

 総務省は、覆面調査とは別に、携帯大手3社の合計で約2100人の利用者に契約前の説明状況や現在の理解状況を聞き取るWebアンケートも実施。また総務省と全携協、携帯3社がそれぞれ利用者からの苦情を分析した結果も報告している。

 結果を見ると、説明や接客の全てに問題があったわけではない。覆面調査で、説明や対応の全体的な印象を調査員が回答した結果は「分かりやすかった」との回答が49%に達し、「説明が理解できない」という8%を大きく上回った。「好感が持てた、良い印象または安心できた」との回答も38%あり、「不安を感じた」という回答は5%にとどまった。