写真●「 社会保険システム連絡協議会」の発起人となった ベンダー5社の社長・役員
写真●「 社会保険システム連絡協議会」の発起人となった ベンダー5社の社長・役員
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 マイナンバー対応や社会保険の電子手続きを進めるため、ソフトウエアやクラウドサービスのベンダーと行政が情報交換などを行う「社会保険システム連絡協議会」が2015年6月26日に発足した(写真)。マイナンバー制度への対応を加速させるために、ベンダーや行政の連携が進みそうだ。

 連絡協議会は、会計や人事管理のソフトやクラウドを開発・提供するオービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー(PCA)、弥生、ラクラス、ワークスアプリケーションズの社長・役員が発起人となって立ち上げた。発足時点の会員企業は28社。コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)が事務局を担い、全国社会保険労務士会連合会が協力団体として参画する。

マイナンバー対応で情報交換

 会員企業には、一般企業が対応を求められるマイナンバーの収集や保管、規程の作成支援サービスを手掛けるベンダーも加わった。連絡協議会の趣旨の一つとして、マイナンバー制度について情報交換を進めるという。同日に、ベンダーと総務省行政管理局や厚生労働省の担当者が意見交換会を行った。

 連絡協議会を発足させた狙いは、マイナンバー対応に加えて、もう一つある。社会保険・労働保険分野での電子申請の普及や届出書の規格化を進めることだ。

 社会保険・労働保険の手続きでは「電子政府の総合窓口(e-Gov)電子申請システム」で申請や届け出を受け付けている。総務省や厚労省は経済団体を通じて企業に電子申請の利用を呼び掛けているが、社会保険・労働保険分野の利用率は2013年度で5.7%だ。

 申請には、e-GovのWebサイトの画面で申請項目を入力したり、書類を一つずつアップロードしたりする必要がある。別途用意された専用ソフトを使う手もあるが、「使いにくい」との声が少なくない。中小企業では、いまだ紙による手続きが圧倒的に多い。

 そこで総務省は2015年4月に、電子申請システムの外部連携API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)の運用を始めた。API連携のソフトを販売するには、開発申請をした上で、最終確認試験に合格しなければならない。6月25日現在で、この試験に合格したのは4社にとどまる。

 弥生の岡本浩一郎代表取締役社長は連絡協議会の発足の挨拶で、電子化の促進はベンダーや社会保険労務士の責任だとして、「法令や制度改正情報に関する正確で確実な情報を漏れなく早期に入手する必要がある」と述べた。そのため、行政や社会保険労務士との情報共有の場が必要だという。

 またマイナンバー対応で必要となる連絡協議会の役割について、PCAの水谷学代表取締役社長は「できるだけ正確な知識を一般の事業者に提供し、タイムリーにソフトを更新していく」と述べ、2016年1月以降に問題なく対応できるようにしたいと語った。

 ユーザー企業にとっては、マイナンバー関連業務の電子化でセキュリティを高める必要がある。対応ノウハウを共有するため、企業や行政の連携がさらに求められそうだ。