パブリッククラウドサービス2強である、米アマゾン・ドット・コムのAmazon Web Services(AWS)と米マイクロソフトのMicrosoft AzureがNoSQLデータベースの分野で激しいサービス競争を繰り広げている。

 攻勢に出たのはAzureだ。2017年5月10日に、新しいNoSQLデータベースサービス「Azure Cosmos DB」を発表。プレビュー期間を設けず一般提供を始めた。

 最大の特徴は、新しいアーキテクチャーにある。データベースエンジン層とストレージ層の独立性を高め、データベースエンジンを選べるようにした。従来のNoSQLデータベースサービス「Azure DocumentDB」(ドキュメント型)と「Azure Table Storage」(キーバリュー型)はそれぞれ、Cosmos DBにおける選択可能なデータベースエンジンの一つになった。他のデータベースエンジンとして、「MongoDB」(ドキュメント型)、「Gremlin」(グラフ型)も利用できる。

 さらに、Azureの世界34カ所の全リージョン(データセンター群)にデータを配置できるようにしたうえ、トランザクション管理機能によってデータの整合(一貫性)を5段階で指定可能にした。ユーザーは、リージョン間のデータ整合とデータベースの応答性能のどちらをどの程度優先するかについて、きめ細かく制御できる。

AWSはインメモリーキャッシュで性能を9倍速に

 一方のAWSはCosmos DBの登場と前後して、NoSQLデータベースサービス「Amazon DynamoDB」で、性能とセキュリティを高める二つの新機能を投入した。

 まず2017年4月20日にDynamoDBのインメモリーキャッシュ機能「Amazon DynamoDB Accelerator(DAX)」をプレビューとして投入。そのあとCosmos DBが登場したのを横目に6月22日には、早々と一般提供に切り替えた。

 NRIネットコム クラウド事業推進部の佐々木拓郎部長によると、DAXを有効にしてキャッシュがヒットした場合、DAX無効に比べ応答時間が概ね9分の1になるという。

 さらに同じ4月20日に、「VPCエンドポイント」の一般提供を始めた。これよって、ユーザーは仮想プライベートネットワーク「Amazon Virtual Private Cloud(VPC)」内の仮想マシンなどからDynamoDBに直接アクセスできるようになった。

 地味に見える新機能だが、DynamoDBに対する、ユーザーの長年の不満を解消するものだ。従来は、VPC内からDynamoDBにアクセスする際にInternet Gatewayを経由しなければならなかった。アドレス変換が必要になり性能が低下するケースや、インターネットとの出入り口となるInternet Gatewayの設置がセキュリティ上の問題とみなされDynamoDBの利用をあきらめるケースもあった。VPCエンドポイントによってそうした問題が解決される。