金融機関や大型施設が主体だった指紋認証技術が、町の小売業やサービス業に広がりつつある。ベンチャー企業のリキッドが、タブレットを使った格安技術を開発した。機能は利用者の本人確認と決済。10万円台と安価な導入費用と手軽さを生かして小規模な店や地域の商店街へ導入を進める。米アップルも指紋によるスマホ決済を準備する中、セキュリティの高さと利便性を備えた決済手段として広がりそうだ。

 東京・麻布十番にある会員制フィットネスクラブ「THE POPEYE」。トレーニングを終えた会員が、支払いのためレジに立った。

写真1●読み取り装置に指をかざして決済する
写真1●読み取り装置に指をかざして決済する
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 会員はタブレットにつないだ小さな機器へ指をかざした(写真1)。ほどなく、タブレットの画面には「お支払いが完了しました」の文字が現れた。時間にして数十秒程度だ。会員は現金の支払いはおろか、財布を取り出すことすらしない。会員カードやクレジットカードを提示することもない。

 同店が導入したのは、指紋認証技術を使った会員管理と料金支払いのシステムだ。利用するのはタブレットと、これに接続する小型の指紋読み取り装置。タブレットには専用のアプリをインストールしてある。

 顧客は初回の登録時に、会員情報と併せて指紋情報も登録する。次回以降の来店時には、読み取り装置に指をかざすだけで来店登録できる。料金は前払いした金額から、来店ごとに一定額を引き去る方式を採る。全会員2000人のうち、20~30人が指紋を登録しているという。