ITベンダーやベンチャー企業、ライバル企業も巻き込み、多種多様な工作機械や産業用ロボットを連携させるIoT(インターネット・オブ・シングズ)の標準プラットフォームを作る―。優れたIT活用事例を表彰する「IT Japan Award 2017」(主催:日経コンピュータ)の受賞企業が決まり、グランプリにはIoTを活用して製造業のビジネスモデル変革に挑むファナックが輝いた。

 準グランプリは工具などのネット通販サイトを運営するMonotaROと宅配ピザ店を展開するストロベリーコーンズ、特別賞は自動車部品メーカーの旭鉄工と、福岡県糸島市が受賞した。11回目となる今回は、日経コンピュータ2016年5月12日号から2017年4月27日号に掲載した事例から選出。IoTや人工知能(AI)など最新技術をビジネスに生かした事例が占めた。

 グランプリを受賞したのはファナックの「FIELD system」。自社製品だけでなくライバル企業の工作機械やロボットを連携させることで、製造現場のIoT活用を推進。API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を公開することで、ベンチャー企業にも故障予知などのアプリを開発できるようにする。2016年8月の段階で200社のパートナーを集めるなど、先進のエコシステム(生態系)構築事例としても高く評価された。

表 IT Japan Award 2017の受賞企業と受賞内容
マイクロサービス、IoT、AI事例が独占
表 IT Japan Award 2017の受賞企業と受賞内容
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収益向上につなげた事例が受賞

 準グランプリのMonotaROは、工具など900万点の商品を扱う自社EC(電子商取引)サイトをマイクロサービスで再構築した点が高く評価された。ストロベリーコーンズはピザ生地の温度管理など店舗でのIoT活用により収益向上につなげた点が評価された。

 特別賞の旭鉄工もIoT活用事例だ。工場装置の動作のムダを見つけるため、東京・秋葉原で購入したセンサーなどを活用、2億円のカイゼン効果を上げた。糸島市は移住希望者にAIでお薦め地域を紹介する地域活性化の取り組みにより受賞となった。

 有識者を交えた審査委員会が審査した。桔梗原富夫(日経BP総研 イノベーションICT研究所所長)を委員長とし、松本隆明氏(情報処理推進機構ソフトウェア高信頼化センター所長)、伊藤重隆氏(情報システム学会会長)、宮下清氏(日本情報システム・ユーザー協会常務理事)と本誌編集長の大和田尚孝を委員とした。

 ファナックは2017年7月5日に、日経BP社が都内で開くIT経営フォーラム「IT Japan 2017」で特別講演を行う。