組み込み機器に深層学習(ディープラーニング)の機能を埋め込めるソフトウエア開発フレームワーク「コキュートス」が登場した。これを使えば、例えばドローンや家電などがネットワーク越しに問い合わせることなく、単体でカメラに映っている物体を認識するといった人工知能(AI)機能を実現できる。パソナテック 大阪支店の夏谷実コキュートス・プロダクトマネージャーが開発し、提供を始めた。

Interop Tokyo 2017でコキュートスについて発表する夏谷氏
[画像のクリックで拡大表示]
Interop Tokyo 2017でコキュートスについて発表する夏谷氏

 パソナテックはエンジニアの転職サービスや人材派遣のイメージが強いが、受託開発も事業の大きな柱であり、IoT(モノのインターネット)システムの導入/運用支援や、米IBMの質問応答/意思決定支援システム「Watson」の導入/構築/運用支援などを手掛けている。コキュートスもこの流れで事業化する。コキュートス自体はMITライセンスのオープンソースソフトウエアであり、無料で利用できる(GitHubのリンク)。それに付随する最適化やカスタマイズなどのサービスをパソナテックが有償で提供する。

 これまで組込み機器で深層学習を利用するにはいくつかの課題があった。まず、ツールの問題。「価格が高い」「使いたいニューラルネットワークがサポートされていない」といった問題があった。加えて、ツールがブラックボックス化されており、カスタマイズできないことが多い。特に自動車の制御系などで利用しようとすると、これが大きな問題になっていたという。

 組み込み機器では特殊なCPUを利用することがあり、こうしたCPUをツールがサポートしていないという問題もある。また、通常のツールはファイルシステムやメモリー管理を前提にしているが、リソースの制約が厳しい組み込み機器のソフトウエアはこうした機能を備えていない場合もある。

 人材の問題もある。組み込み機器で深層学習を利用するには、深層学習やそれを実現するのによく使われるプログラミング言語のPython、組み込みプログラミングやハードウエアといった幅広い知識が要求される。ところが、そのすべてに精通したエンジニアはほとんどいない。