古河電気工業がIT子会社を軸に、グループ全体のIT戦略の強化に乗り出した。IT子会社である古河インフォメーション・テクノロジー(FITEC)の株式51%を富士通に譲渡して提携。2017年10月以降、富士通の人材育成システムを取り入れてFITECの提案力やプロジェクトマネジメント力を高め、グループ全体の情報化やモノ作りのIT化を支援する。背景にあるのは、思うようにグループ経営に貢献できていなかったというFITECの事情。同社は自らを鍛え直し、買ってもらえるIT子会社へと生まれ変わることを選んだ。

 FITECは主に古河電工グループ向けに生産管理システムや業務システムを開発・運用する。同社の売上高比率のうち約7割がグループ企業向けのビジネスだ。

古河電気工業戦略本部情報システム部の高橋宏行主査(左)と古河インフォメーション・テクノロジー取締役の伊沢謙一ERP事業部長(右)
古河電気工業戦略本部情報システム部の高橋宏行主査(左)と古河インフォメーション・テクノロジー取締役の伊沢謙一ERP事業部長(右)
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 FITECが強化を図るスキルは2種類。一つは企画力や提案力、プロジェクトマネジメント力といった上流工程のスキルだ。富士通グループ内の人材育成プログラムをFITEC独自のプログラムに構成し直して導入する。「プロジェクトマネジャー」や「ITアーキテクト」といった、FITECが求める人材像に合せて、エンジニア個々のレベルに応じたeラーニングや研修などを実施する。

 教育を受けたエンジニアは、開発現場でのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を通して実践的な経験を学ぶ。古河電工グループに加えて、富士通グループの開発現場で開発に携わることで、業務ノウハウやプロジェクト運営を学ぶ予定だ。現在も古河電工グループ内でOJTを進めてきたが、製造業の限られた現場でしか開発ができなかったため、人材教育の内容が制限されていたという。

 もう一つ、同社が向上を目指すスキルはITを活用したモノ作りノウハウだ。こちらは古河電工をはじめとするグループ各社との人材交流を通じて身に付ける。その前提となるのが、富士通のノウハウを基に育成する上流工程のスキルだ。グループ企業へ企画人材を送り込み、IoT(インターネット・オブ・シングズ)や人工知能(AI)をはじめとする生産革新に役立つ技術を駆使して、グループのモノ作りをレベルアップする。既にIoTを導入してグループの工場の生産管理システムなどを刷新するプロジェクトが、複数走っているという。

 上流工程のスキルを高めた企画人材をまず育成し、それをグループ各社に供給。現場でのシステム開発を通じて業務知識やモノ作りノウハウを吸収し、再びFITECに戻る。グループのプロジェクトで得た知識やノウハウをFITECに展開し、全体のスキルアップを図る。このサイクルを繰り返すことで、古河電工グループ全体のIT戦略推進に貢献する。