サイバー攻撃による個人情報流出が止まらない。日本年金機構に続き、東京商工会議所でも被害が明らかになった。ただ、表面化している被害は氷山の一角にすぎない。むしろ本当の危機はこれからと、専門家は警鐘を鳴らす。攻撃者が金銭を目的としているなら、入手した電子メールアドレスなどを使って次は企業の機密を盗み出そうとするかもしれないからだ。セキュリティ対策企業や対策保険への需要が急増するなど企業は対応に走る。事前と事後、両面での対策が不可欠だ。

写真●サイバー攻撃を受け謝罪する石油連盟の幹部
写真●サイバー攻撃を受け謝罪する石油連盟の幹部
[画像のクリックで拡大表示]

 「個人情報を提供していただいた皆様をはじめ、関係者に多大なご迷惑とご心配をおかけしたことを深くお詫びする」。6月15日、石油精製・元売り会社で構成する石油連盟の松井英生専務理事は、こう頭を下げた(写真)。

 同連盟は9日、サイバー攻撃を受けて職員のパソコンがウイルスに感染したことを発表。個人情報が流出した懸念を持たれていた。調査の結果、保有する2万7000件あまりの個人情報の流出は確認できていないがその可能性は否定できないとして、謝罪会見に踏み切った。

表●最近の主なサイバー攻撃
名称発覚した日時サイバー攻撃の概要
日本動物園水族館協会5月27日会員専用Webサイトが不正アクセスを受け、会員のメールアドレスとパスワード、電話番号などが流出
日本年金機構6月1日標的型攻撃により、基礎年金番号や氏名、生年月日といった個人の年金情報125万件が流出
国立情報学研究所6月5日不正アクセスによりサーバーが乗っ取られ、サイバー攻撃の踏み台にされた
石油連盟6月9日標的型攻撃により、石油政策関連情報などが流出。個人情報の流出は確認できていない
東京商工会議所6月10日標的型攻撃により、セミナーの参加者名簿など1万2000件あまりの個人情報が流出した疑い

 日本年金機構からの125万件におよぶ年金情報流出で、一気に注目を浴びたサイバー攻撃。その被害が止まらない()。10日には東京商工会議所が、サイバー攻撃によって1万2000件あまりの個人情報が流出した恐れがあると公表した。