IoT(インターネット・オブ・シングズ)の広がりを受け、デバッグ事業を手掛けるITベンダーが拡充策を相次いで打ち出している。ハーツユナイテッドグループ(HUG)はローソン会長だった玉塚元一氏を社長に招き、同氏の人脈や経営力で業容拡大を図る。イー・ガーディアンはセキュリティ検査も同時に請け負い、総合力で勝負する。

 各社が狙うのはIoTで市場拡大が見込まれる電子機器や自動車などの品質管理需要。スマートフォンアプリの広がりも追い風に、裏方役から表舞台への転身を目指す。

 HUGが直近で取り組むのは、デバッグ事業に必要な基礎体力の強化だ。具体的にはエンジニア人材の採用や育成、デバッグサービスのラインアップの体系化、営業力の強化の3点である。

デバッグ事業を「市場からの期待値が非常に高い、大きな成長戦略を描ける」と語る玉塚氏
デバッグ事業を「市場からの期待値が非常に高い、大きな成長戦略を描ける」と語る玉塚氏
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 強化策を進めるうえで同社が頼みとするのが、2017年6月27日に社長兼CEO(最高経営責任者)に就任予定の玉塚氏の経験と人脈だ。人材についてはデバッグのスキルアップや採用の強化に取り組む。同社は現在、8000人のデバッグ技術者を抱える。「一人ひとりの生産性を高めるとともに、習得する技術の幅を広げる。優れた人材がさらに多くの優れた人材を引きつけられるようにする」(玉塚氏)。

 サービスに関しては企業のIoTシステムや人工知能(AI)システムを対象にしたデバッグ事業を拡充する。積極的なM&A(合併・買収)もしかける意向だ。玉塚氏は6月1日付でHUGの代表執行役員に就任済み。既に営業力の強化については玉塚氏の人脈などを通じて、「かなり強い販売チームを育成しつつある」(玉塚氏)。現状の営業組織はゼロに近いという。

 もともとHUGは現社長兼CEOの宮沢栄一氏が中心となり、アルバイトなどを雇って始めた技術者気質の強い企業だった。さらなる業容拡大には、玉塚氏のような「ビジネスの最前線で戦ってきた人が手本となってブレークスルーを図る」(宮沢社長)必要があると考えた。