写真1●三井住友銀行の本店
写真1●三井住友銀行の本店
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 三井住友銀行が、2年半にわたる大仕事に区切りをつけた。2015年5月4日、住友銀行とさくら銀行の統合後初めてとなる勘定系システムのハードウエア更改作業を完了。システム基盤の整備を終えた。今後は本業の成長を支える戦略分野へのIT投資を加速させる(写真1)。

 リテール分野では、営業担当者向けに2000台のWindowsタブレットを導入。運用商品のシミュレーションアプリなどを開発済みで、2015年6月末までに全てを配り終える予定だ。

バックアップ環境のハードを倍増

 「今後10年の基礎ができた」。三井住友銀行の宮川琢弥システム統括部統括グループグループ長は語る。同行はゴールデンウイーク期間中に、東日本のセンターにある勘定系システムで使う4台のNEC製メインフレームを最新機種に入れ替えた。これをもって、検討を重ねた末に2012年秋に始動させた更改プロジェクトを完遂した。

 本プロジェクトでは、合計16台のメインフレームを4度に分けて導入。作業にかかる時間を短く抑え、更改作業のために営業停止日を設けるなどはしなかった。「通常の営業停止時間で、全ての作業をやり切れた」と、宮川グループ長は、説明する。

 今回取り組んだのは、実は単純なハード更改だけではない。三井住友銀は、西日本にあるバックアップ用のメインフレームを4台から8台に倍増させ、東日本の本番環境と同数にした。1年後までに東西センターの勘定系システムの両方を本番用とし、西日本の支店などは西日本センターの勘定系システムを使うようにする(図1)。

図1●三井住友銀行が取り組んだ勘定系システムのハードウエア更改の内容
図1●三井住友銀行が取り組んだ勘定系システムのハードウエア更改の内容
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 東西両方のセンターにある勘定系システムを本番用途として稼働させる狙いはBCP(事業継続計画)強化にある。全ての支店が東日本の本番センターを使う現在の仕組みよりも、有事の際の切り替えリスクを軽減できる見込みだ。

 今回導入したメインフレーム上で、現行の勘定系アプリケーションを10年間にわたって稼働させられることを、三井住友銀はNECとの間で確認済みだ。メインフレームのバージョンアップ対応でアプリ改修などに追われることはない。

 「ハード更改を最重要案件として、費用と人材をかけてきた。これが無事に終わったので、今後は成長分野への施策を加速できる」(宮川グループ長)。