日立製作所、富士通、NECの大手ITベンダー各社が提供する、製造業向けデジタル化支援サービスが出そろった。

 いずれの企業もIoT(インターネット・オブ・シングズ)技術を事業の軸にし、強化する動きを見せている。日立の東原敏昭社長は、2017年6月8日の投資家向け戦略説明会で、「2020年中期戦略では、IoT時代のイノベーションパートナーになると宣言した。Lumadaを中核にして顧客との“共創”を進めていく」と力を込めた。

日立製作所の東原敏昭社長
日立製作所の東原敏昭社長
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 デジタル化支援サービスの基盤の一つが「IoTプラットフォーム」だ。日立は「Lumada」を2016年5月、富士通は「COLMINA」を2017年5月に発表した。2社は製造業としての面も持っていることから、これまで個々の顧客に対しSIを提供してきた。そのノウハウや技術を、自社のIoTや人工知能(AI)技術と組み合わせ、IoTプラットフォームとして体系化している。NECもIoTを生かした製造業向けソリューション群の「NEC Industrial IoT」を2015年6月に発表している。

各社のIoTを活用した製造業向けサービスの特徴や最近の動き
各社のIoTを活用した製造業向けサービスの特徴や最近の動き
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 各社はこれらを基に、IoTを活用した製造業向けデジタル化支援サービスを展開する。日立は生産現場向けの2つのシステムを2017年7月から提供。自社内実践や他社との協業で積み上げた事例を汎用化し、ついに拡大を加速していく狙いだ。富士通も設計情報の管理や故障予測など25種のサービスを2017年7月から提供する。特に設計向けサービスに強みを持つ。NECは画像認識技術に強みがあり、自動車部品工場を中心に導入実績がある。各社はそれぞれ得意な分野を攻める格好だ。新たな成長分野を巡り、陣取り合戦が始まった。

顧客と“共創”を重ね、「製造業のシンクタンク」に

 日立のLumadaの製造業向けサービスは、まず生産現場の効率化や改善に注目。自社内の取り組みや他社との協業の中で貯まった知見をLumadaに蓄積していく。それを活用し、顧客の課題を解決する。

 日立が重要視しているのは、“共創”という言葉だ。顧客の課題やビジョンを「共に」考え、新たな価値を「創造」していく。Lumadaは、顧客との共創のためのプラットフォームそのものだという。

 「最終的には、顧客の経営レベルの課題を解決する製造業のシンクタンク的存在を目指す」とチーフルマーダオフィサー(CLO) 兼 産業製造ソリューション本部本部長の森田和信氏は話す。CLOは各BU(ビジネスユニット)におけるLumadaの責任者で、森田CLOは製造業向けに当たる「産業・流通BU」に所属している。