シーエー・モバイルはクラウド基盤構築ソフト「OpenStack」を使って、同社が運用を受託する消費者向けWebサイトの運用を自動化した。負荷に応じて仮想マシンを自動的に増やすオートスケーリング機能を活用。年末年始など負荷が急増する時期でもエンジニアを常駐させることなく乗り切る体制を築いた。サーバーを配置する期間も半日から10分に縮めるなど、インフラ運用を大きく効率化した。

 シーエー・モバイルが構築したのは、OpenStackを使ったプライベートクラウド環境だ。OpenStackはクラウド基盤の構築・運用管理向けに開発されたオープンソースソフトウエア(OSS)。シーエー・モバイルはレッドハットのOpenStackディストリビューションである「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform」を採用した。

シーエー・モバイルが構築したクラウド基盤の構成
シーエー・モバイルが構築したクラウド基盤の構成
(出所:レッドハット)
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 シーエー・モバイルはサイバーエージェント子会社で、人気音楽グループなどの携帯電話向けWebサイト運用を手掛ける。新たなクラウド基盤は、これらWebサイトのシステムを稼働させるためのものだ。

 同社は物理および仮想サーバー700台を全面的に移行する方針。2015年8月の稼働当初は、まず22台分を移行した。新クラウド基盤の構築にかかった費用は、ハード、ソフト、人件費を含めて約3000万円だ。開発に携わったITエンジニアは2人。2015年5月にプロジェクトを始め、約3カ月で稼働にこぎつけた。

年末年始、現場詰めから解放

 シーエー・モバイルがOpenStackのクラウド基盤で実現したのは、負荷に応じて仮想マシン(インスタンス)を自動的に増やす「オートスケーリング」だ。クラウド基盤上で動かすWebシステムのプロセッサ負荷を監視し、一定の値を超えたら自動的にインスタンスを複製して起動。処理負荷を分散させてシステムを動かし続ける。

 「オートスケーリング機能のおかげで、今年の年始は現場に詰めることなく、ゆっくりと正月気分を味わえた」。シーエー・モバイルで新クラウド基盤の導入を担当した小野寺唯インフラシステムグループサーバエンジニアは、その効果を振り返る。

 同社が運用する携帯サイトは、音楽グループがテレビで取り上げられたりニュースが流れたりすると、アクセスが急増する。平時の9倍以上に増えることもあるという。

 歌番組などでテレビの露出が増える年末年始は、あらかじめサーバーを増設しておくものの、それでも突発的な負荷増大が起こり得る。結果、2014年から15年にかけての年末年始は、小野寺氏をはじめとする同社のITエンジニアが現場に詰めるなど、気を抜けない状態が続いた。

 サーバーを新たに設定・配置するプロビジョニングの時間も、半日かかっていたものを10分へと大幅に短縮できた。事業部が新しいコンテンツやサービスを追加する際に、開発や検証に使うサーバーを用意する必要がある。従来は物理的なハードを使い、OSやミドルウエアをインストールするといった作業に時間がかかっていた。