将来はスマートフォンにID(識別子)やパスワードを入力する場面がなくなるかもしれない。東京大学大学院情報理工学系研究科ソーシャルICT研究センターは、ユーザーが普段使っているスマートフォンの利用履歴などを個人認証に使う「ライフスタイル認証」に関して、5万人規模の実証実験を2017年1月から行う。

 ユーザーにとっては、パスワードの管理や生体認証のための動作などが不要になる。実証実験によって、既存のIDやパスワードに代わる認証技術の確立を目指す。

小学館や凸版印刷などの企業が参画

写真●「ライフスタイル認証」の仕組みを説明する東京大学大学院情報理工学系研究科ソーシャルICT研究センターの山口利恵・特任准教授
写真●「ライフスタイル認証」の仕組みを説明する東京大学大学院情報理工学系研究科ソーシャルICT研究センターの山口利恵・特任准教授
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 実証実験は「MITHRA Project (ミスラプロジェクト)」という名称で、小学館や凸版印刷、ヤフー、TISなどが参画して、2017年1月から3月にかけて実施する。小学館の漫画アプリ「マンガワン」や、凸版印刷の電子チラシアプリ「Shufoo!」などのユーザーから同意を得て5万人規模の被験者を募る。費用は公開していないものの、三菱UFJニコスによる5年間の寄付講座「次世代個人認証技術講座」の総額2億5千万円からまかなう。

 同研究センターの山口利恵・特任准教授は、ユーザーから同意を得る際はプライバシー保護のために「4コマ漫画などで実証実験への参加で想定されるメリットとデメリットを分かりやすく伝えたい」という(写真)。

図●「ライフスタイル認証」の仕組み
図●「ライフスタイル認証」の仕組み
(出所:東京大学大学院情報理工学系研究科ソーシャルICT研究センター次世代個人認証技術講座)
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 ライフスタイル認証では、ユーザーが持ち歩いているスマホやタブレット端末に蓄積された位置情報や利用時間、利用しているサービス内容に加えて、サービスを提供している企業がサーバーに蓄積したユーザーごとのアプリ利用履歴や買い物履歴などのデータの規則性を要素として抽出して認証に使う()。