米IBMがクラウドサービスのブランドを「Bluemix」に統一してから約8カ月。日本IBMのデータセンターからはいまだにPaaSのBluemixを提供していない。

 こう説明すると、IBMは日本でクラウドサービスを提供していないかのような誤解を与えかねない。実際にはベアメタルサーバーを提供するIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)やプライベートクラウドのマネージドサービスなどを提供している。混乱の原因は、「Bluemix」が複数の意味を持つからだ。

 

 Blumixはシステム基盤を提供するIBMのクラウドサービス全体を指すブランド名であると同時に、構築済みのアプリケーションの開発・実行環境のPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)でもある。つまり、日本のデータセンターから提供できていないのはPaaSだけということだ。

日本IBMの本社ビル(東京・中央区)
日本IBMの本社ビル(東京・中央区)
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 Bluemixの内容が分かりにくくなった背景には同社の戦略がある。IBMクラウドの変遷から同社の戦略を整理しよう。

買収ブランドを統合

 IBMには複数のクラウドサービスがあり、それぞれ別のブランドとアカウントで提供していた。IBMは2016年10月にこれらのサービスのアカウントを統合し、ブランド名をBluemixに統合した。

 統合前にはベアメタルサーバーを提供するIaaSは「SoftLayer」、IaaS基盤を構築するOSS(オープンソースソフトウエア)であるOpenStackのマネージドサービスは「Blue Box」と呼んでいた。

 SoftLayerやBlue BoxはIBMが買収で獲得したサービスだ。IBMは2013年7月に米SoftLayer、2015年6月に米Blue Boxの買収完了を発表している。

 一方、PaaSのBluemixはIBMが開発した。PaaSのBluemixは米GEがIoT(インターネット・オブ・シングズ)基盤「Predix」にも組み込んでいるPaaS基盤構築ソフトのOSS「Cloud Foundry」を基にしている。