国内の携帯大手は2017年5月から順次、現行のLTE/LTE-Advancedの後継となる「第5世代移動通信システム(5G)」の大規模な実証実験を始めた。多様な業種の大手企業と手を組んでいるのが特徴だ。東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年の商用化に先駆け、業種の垣根を越えて前哨戦がスタートした。

表●5Gの主な実証実験
表●5Gの主な実証実験
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 5Gは最大通信速度が現行の約20倍の20Gbps。遅延時間は約10分の1の1ミリ秒に減るなど通信性能が飛躍的に向上する。こうした特性を生かした具体的なサービスを想定した実証実験が相次ぐ。

 NTTドコモとコマツは2017年5月から2018年3月まで、5Gを利用し土木現場の建設機械を遠隔操作するフィールド実験を実施する。

 建機に搭載したカメラで土木現場をリアルタイムに撮影し、5Gのネットワークを介して遠隔のオフィスに送信。オフィスの作業員が映像を見ながら建機を遠隔制御する。高精細な映像を安定して送信できるか、作業員によるきめ細かい操作に建機側が追従できるかなどを検証していく。KDDIも大林組やNECと建機の遠隔操作実験に取り組む。

東京五輪の警備強化につなげる

 東京五輪のテロ対策などを視野に、警備サービスの強化に5Gを活用できるか検証する実験も始まっている。

 監視カメラやドローンなどから監視センターに5G網経由で高精細な画像を送り、人物の特定や細かい動作の把握、自動車のナンバープレートの確認などに役立てる。NTTドコモは綜合警備保障(ALSOK)、KDDIはセコムと共同で実施する。

 ソフトバンクは傘下のSBドライブや自動運転技術を研究・開発する先進モビリティなどと共同で2017年秋をめどに、隊列走行するトラックの遠隔管理に5Gを活用する実験を始める。