「既に顧客企業との契約がいくつかある」。日本IBMの加藤陽一ワトソン事業部ビジネス推進部長兼The Weather Company担当は、2017年3月13日から国内で販売が始まった気象予測データ提供サービスについてこう話した。サービス開始から2カ月の時点で、試験導入ではなく長期契約を想定した本格採用があったという。

 IBMはWatsonに気象予測データを“食わせ”て、ITソリューションを強化しようとしている。Watsonに気象予報データを投入して学習させ、それにより、例えば流通業向け販売予測システムの構築案件を手掛けることなどを想定している。

加藤陽一ワトソン事業部ビジネス推進部長兼The Weather Company担当
加藤陽一ワトソン事業部ビジネス推進部長兼The Weather Company担当
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 気象予測データの販売は、2015年11月に米IBMが買収を発表した「The Weather Company(TWC)」が取り組んでいる事業だ。気象衛星の観測データや航空機に取り付けたセンサーデータなど大量の気象データを収集し、分析して気象予測データを生成。これを基に、航空会社にフライト経路を決めるための気圧予測データや、電力会社に発電計画を決めるための平均気温変化予測データを作成し、提供している。

 この事業を、Watson拡販の武器にする。米IBMのジニー・ロメッティ会長、社長兼CEO(最高経営責任者)は、TWCについて「Watsonのポートフォリオの中で最も重要な位置にある」(クラウドのイベント「InterConnect 2017」の基調講演より)とみている。

“未来のデータ”が手に入る

 一見すると既存のWatson事業と縁遠いように見える「気象予測」。これをIBMが重視するのは、気象予測データを通じて産業活動の「未来」を予測できると見込んでいるためだ。

 米The Weather Companyのマーク・ギルダースリーブ プレジデント ビジネス・ソリューションズ担当は「気象は全てのビジネスに影響を及ぼしていると言ってよい」と話す。気象がビジネスに影響を及ぼしているのであれば、気象データと、ビジネスに関連する何らかのデータの間に、相関性が見つかる可能性が高い。

米The Weather Companyのマーク・ギルダースリーブ プレジデント ビジネス・ソリューションズ担当
米The Weather Companyのマーク・ギルダースリーブ プレジデント ビジネス・ソリューションズ担当
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