格安スマホ市場の競争を巡り、KDDI(au)とソフトバンクが展開するサブブランドへの不満がMVNO(仮想移動体通信事業者)の間で噴出している。KDDI系の「UQ mobile」とソフトバンク系の「Y!mobile」は派手な広告宣伝を展開するだけでなく、米アップルの「iPhone」も取り扱う。通信の実効速度は携帯電話大手並みに速く、テザリングも制約なしで使える。

 一部報道によると、総務省はMVNOの不満を受け、競争の公平性などについて考え方をまとめるという。もっとも、抜本的な解消は難しいとする見方が一般的だ。

「UQ mobileを優遇した事実はない」と胸を張るKDDI

 MVNOの不満は、総務省が2016年10~11月に開いた有識者会議(モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合)でも出ていた。「MNO(大手携帯電話事業者)の子会社やサブブランドはMVNOが成し得ないような料金・サービスを展開しており、MVNO市場がMNOによる協調的寡占状態になってしまう。MNOとグループ会社に対する監視を強化していくことが重要」(ケイ・オプティコム)といったものだ。

ケイ・オプティコムは総務省の有識者会議でサブブランドの問題を指摘
ケイ・オプティコムは総務省の有識者会議でサブブランドの問題を指摘
出所:総務省
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 有識者会議の結論は、「大手携帯電話事業者のグループ内のMVNOとそれ以外のMVNOとの間で費用負担や品質などの提供条件の面で公正な競争環境が確保されているかについては電気通信事業法に基づく卸役務の届け出内容の整理・公表を通じ、総務省が分析・検証を進め、結果を示していくことが適当」とするにとどまった。

 その後、総務省は2017年1月中旬までMVNOへのアンケートを行い、1月下旬から2月中旬には主要MVNOへの聞き取り調査も実施した。ここでも出てきたのはサブブランドへの不満ばかり。「KDDIは広告宣伝費やテザリングの利用可否などでUQ mobileを優遇している。契約数が大幅に増えているにもかかわらず、実効速度が全く落ちていないのはおかしい。不当な差別的取り扱いがあるのではないか」といった声が相次いだ。