KDDI(au)がIoT(インターネット・オブ・シングズ)事業を急拡大させている。通信モジュールや回線だけでなく、分析ツールやシステム構築なども含めてサービスの幅を広げ、顧客企業のIoT活用ニーズを漏らさず取り込む環境を整える。

 その極め付きが、IoT関連データの“取引所”を2017年6月に自ら開設し、顧客企業が収集したデータを取引所で販売できるようにするビジネスだ。IoT機器のCPUに着目したソフトバンクとは別の視点で、IoT関連ビジネスのブルーオーシャンにいち早く投資し、覇権を握りたい考えだ。

2016年後半から実証実験急増

 「2016年4月にビジネスIoT推進本部を立ち上げてからの1年間で、本部内の人員が急増している」。KDDI ソリューション事業本部 ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部の原田圭悟部長は、2017年5月17日に開催したIoTビジネスに関する記者会見でこう胸を張った。

KDDI ソリューション事業本部 ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部の原田圭悟部長
KDDI ソリューション事業本部 ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部の原田圭悟部長
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 同本部では顧客企業のIoT活用ニーズに応じ、通信回線の提供といった環境整備を支援している。2016年後半からはIoTの本格普及への機運が高まり、KDDIでも農業・漁業や除雪車、ドローン、水道メーターなどでIoTを採り入れる実証実験が相次いだ。

 高まる一方の需要を先食いすべく、回線や通信モジュールに加え、データの集計・表示や分析を担うクラウドサービスを複数ラインアップ。「システム構築領域の開拓は、当社にとってチャレンジングな取り組み」(原田部長)としつつ、急成長する市場の需要取り込みに余念がない。

 そして今回、満を持して提供するのがIoTデータの取引所である「KDDI IoTクラウド ~データマーケット~」だ。KDDIが収集した各種データ群に加え、分析ツールや分析サービスを提供、顧客企業が自社のIoTデータと組み合わせて分析できる。

“IoTデータ取引所”のサービス群
“IoTデータ取引所”のサービス群
(出所:KDDI)
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 データ群はサービス開始当初、訪日外国人観光客の動向解析や商用車から収集したプローブ情報など7種類を用意。目玉は顧客企業が自らのIoTデータをデータマーケットで外販できることだ。

 データマーケット開設の狙いを原田部長は「多くの顧客企業がIoTでデータを収集し始めているが、『どう使ってよいか分からない』『他社が持つデータと組み合わせられないか』といった声が出ていた。2017年5月末に個人情報保護法の改正も控えており、このタイミングでそうしたニーズに応えたいと考えた」と明かす。