米Intelは2017年5月16日(米国時間)、新型メモリー「Intel persistent memory」を発表し、欧州SAPが米国で開催したイベント「Sapphire Now 2017」でデモを披露した。「SSD(Solid State Drive)よりも高速で、DRAMよりも大容量化しやすい」という特徴を備える。AI関連技術であるディープラーニング(深層学習)の用途で期待を集めそうだ。

DRAMより大容量化しやすく、電源を落としても消えない

 Intel persistent memoryは、Intelと米Micron Technologyが2015年に発表した「3D XPoint」の技術を基にした製品。DIMMスロットに挿入し、メインメモリーとして動作する。DRAMとは違い、マシンの電源を落としてもデータが消えない不揮発性メモリーの一種だ。発売は2018年を予定する。

 Intel persistent memoryの詳細な仕様について、Intelはまだ明らかにしてはいない。仮に3D XPointの発表時と同等の性能とすれば、アクセス速度はSSDと比較して1000倍高速である。DRAMと比べれば遅いものの、記録密度はDRAMの10倍という。つまりDRAMよりも大容量のメモリーを搭載したシステムを実現しやすくなる。

 SAPのイベントでIntelが披露したデモも、大容量のメモリー空間を作れることをアピールする内容だった。具体的には、メインメモリーとして192GバイトのDRAMと1.5TバイトのIntel persistent memoryを装着したサーバーで、SAPのインメモリーデータベース「SAP HANA」の開発中バージョンを稼働。処理するデータの特性に応じてDRAMとpersistent memoryを使い分けることによって十分に高速な処理ができることと、DRAMだけで構成するよりも安価に大容量のメモリーを搭載したシステムを構築できることを示した。

大量データの学習をSSDよりも大幅に短時間で可能に

 新型メモリーの有力な用途として、多くの有識者が指摘するのはディープラーニングなどの機械学習である。ディープラーニングでは、大量のデータを学習するプロセスを高速に回すために、広大なメモリー空間が欠かせないためだ。国立情報学研究所の佐藤一郎氏(副所長)は 「高価なDRAMでは大容量化が難しい一方で、SSDなどのフラッシュではアクセス性能が遅すぎる。両者の間を埋められる」と指摘する。

 ディープラーニングに加えて、企業情報システムのデータベースにも大きなインパクトがあるとの指摘もある。野村総合研究所のITアーキテクトである石田裕三氏(上級アプリケーションエンジニア)は、「トランザクション処理用とデータ分析用でデータベースを分けるという企業情報システムの”常識”を崩せる」と話す。石田氏によると、トランザクション処理とデータ分析の要件を両立させるには、多数のコアを持つプロセッサーと大容量のメモリーを搭載したサーバーが必要という。この大容量のメモリー空間を実現する上で、DRAMよりも大容量化しやすいIntel persistent memoryが役立つわけだ。