IoT(インターネット・オブ・シングズ)のセンサーネットワーク向けの新たな通信技術として注目されている「LPWA(ローパワー・ワイドエリア)」。いよいよ離陸に向けて動き出した。2017年に入り、さまざまな場所・用途で商用化を見据えた実証実験が相次いでいるのだ。

 長野県北西部の大町市。ここではNTTドコモとITベンチャーのハタプロ(東京都港区)が共同で、市内の水源3カ所、配水池11カ所と市役所を結ぶネットワークを、LPWAの方式の一つである「LoRaWAN(ローラワン)」で構築。各施設の稼働状況を常時監視するシステムを実証実験した。

 大町市は周囲を山に囲まれており、冬場は積雪も多い。山間部の一部の水道施設は携帯電話のエリア外で通信環境がない状態だったが、こうした場所でもLoRaWANにより通信環境を確保できた。通信距離は最大5kmに達したとしている。

 実証実験した時期が積雪の多い3月だったのもポイントだ。当時の積雪は最大2mほどで、雪の中に埋もれた状態の水道施設にLoRaWANの通信モジュールを設置したが、そうした悪条件下でも問題なくデータの送受信ができたという。

大町市内の実証実験は、山中の水道施設で実施(左)。最大2mの積雪に埋もれたLoRaWANモジュールでも問題なく通信できることを確認した(右)
大町市内の実証実験は、山中の水道施設で実施(左)。最大2mの積雪に埋もれたLoRaWANモジュールでも問題なく通信できることを確認した(右)
(出所:ハタプロ)
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 実証実験に取り組んだ各社は水道施設の監視用だけでなく将来は山岳救助などへの応用にも取り組みたいとしている。一方、本格導入に向けた課題の洗い出しも実施。市内では地形により見通しが大幅に遮られるエリアもあり、「山中で安定的な通信エリアを構築するためには中継ポイントを設ける必要がある」(ハタプロ)ことなどが分かったとする。

神戸や仙台、関東でも

 大町市以外にも、LPWAの可能性に着目し実証実験に取り組む例が増えている。神戸市と神戸大学は児童の登下校時の見守りを想定して、NTTドコモやハタプロと共同でLPWAの実証実験を2017年4~5月に実施した。