「我々にとって、金融領域以外のサービス基盤を手がけるのは全く新しい挑戦だ」――。三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の竹田達哉 ITイノベーション推進部オープンイノベーショングループ長は意気込む。

 メガバンクが金融業の枠を超え、IT関連サービスの領域に相次ぎ打って出た。SMFGは2017年5月に生体認証サービスを手がけるIT子会社を設立。みずほフィナンシャルグループ(FG)はビッグデータ分析などを手掛けるITサービス企業を2017年夏に新設する計画だ。金融(Finance)と技術(Technology)の融合で新たなサービスを生み出す「FinTech」の流れをメガバンクが自ら加速し、新たな収入源の獲得につなげる考えだ。

表●3メガバンクのIT関連サービスへの取り組みの例
表●3メガバンクのIT関連サービスへの取り組みの例
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認可第1号はSMFG

 SMFGは生体情報技術に強みを持つアイルランドのダオンおよびNTTデータと2017年5月1日、合弁会社を設立した。インターネットバンキングやEC(電子商取引)サイトといったオンラインサービスのログインなどに使える生体認証アプリを開発し、提供する。当初は指紋と顔、声紋の認証を扱う予定だ。まず三井住友銀行のインターネットバンキングサービス「SMBCダイレクト」で採用し、他の銀行や事業者にも売り込む。今夏にも営業を始める。

 SMFGが認証サービスという非金融分野に参入できたのは、2017年4月に改正銀行法が施行されたからだ。従来の銀行法は他社へのサービス提供を主業務とする非金融企業に出資する際の出資比率を、金融持ち株会社は15%、銀行は5%までに制限していた。

 改正法では金融庁の判断の下で上限を引き上げられる。それを受けてSMFGは2017年4月18日、第1号案件として金融庁の認可を取得し、新会社に約67%を出資した。